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第五十九話 ページ10



「今のは?」

「要約すれば、所謂 記憶消しってやつです。
かなり条件のある技なので、なかなか頻繁には出来ませんがね」


条件は幾つかあって、まず一つが『広範囲』
二つ目が『複数人』三つ目は『心根から恨みを抱く相手である事』、四つ目が『死人』

広範囲の異能を何度もぶっ放せば勿論目立つし、調和を乱す元になる。異能者でなくともあの光は見えているのだから

『複数人』とは恨みを抱く人数の事。たった一人の人間の為にこんな事してられないだろうし、だったら周りの共犯者も巻き込んで仕舞えばいい

『心根から恨みを抱く相手』もそのままだ

『死人』は生きる者である限り、情報が途切れる事はないから。


「今の粉は建物も何も関係なく透き通って降り注ぎます。
彼らは基本的にヨコハマ内を移動していた事はよく知っているから、ヨコハマにだけ彼らの情報が消え去る様にしました


私が貴方達に渡した情報は、術者の私も既に忘れたし貴方達も忘れた筈。
書類の文面も全て白紙に戻っているしポートマフィアの遺体も忽然と消失しているのでは?」


悪戯の成功した子供の様に笑うと、呆然とした後に吹き出し、腹を抱えて笑い始めた太宰さん
ジョンさんは焦って何かを組合に確認している


「あっはっは!何それ、最高だよ!!」

「でしょ?如何でしたか、ジョンさん」

「……きっと駄目だね。管理していた奴が半泣きになって書類をやり直そうとしてる」


携帯から耳を離し、頸を振った。それを聞いたら余計に笑い始めた太宰さん。申し訳ないとは思うが此方もまた消さなければいけない事情がある


「ふふ、未だ完璧では無いけれど
彼らーーー『忍』の伝説は終わりですよ」


富や名誉は全て無視して、自らの組織を繁栄させ続ける組織。その為に禁忌を犯し、弟を食い物としたその所業は死んでいた人間性が怒りの雄叫びを上げるほどに赦せなかった


「そう云えば」

ヒイヒイ云い乍ら目元の涙を拭って、太宰さんが此方を向く


「君の名前はーーー……あれ?」


「ーー判らない、でしょう
それもまた、彼らの情報の内に入るんですよ」


元来、私とて弟に例外せず名前は無かった。
あの時名乗ったのは前世の名前。この世界にAどころか"私"という存在を示すものは無い。

詰まりーーーー


「私は未だに彼らの一部。私が生きる限り、彼らは死んだ事にはならないんですよ」


風に揺れて、蜃気楼の様に消えた少女
太宰は冷や汗と厭な予感を感じ、奇跡的に機能する携帯をポケットから出して電話をかけた

ジョンは未だ繋がる組合に大急ぎで言葉を連ね、一方的に切って走り出した

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まるげりーた - え、終わり⁈名残惜しすぎます〜! (8月20日 19時) (レス) @page48 id: cea80c1fef (このIDを非表示/違反報告)
桜の下(プロフ) - とても面白いです!更新頑張ってください! (2020年5月8日 13時) (レス) id: 6dcf85fe6b (このIDを非表示/違反報告)
ふふふ。 - 面白いです!!最高です!!応援してます!! (2018年4月23日 20時) (レス) id: 02b15496d1 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - 六十五話、「ただ浮かんでいる」の後の「胎内」は「体内」ではありませんか?更新早くてすごく嬉しいです!長文失礼しました。 (2018年4月15日 20時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
冬霞 六花(プロフ) - 第六十八話の、「ギルドには、ボスが必要です」の処が「ギルドには、バスが必要です」に成ってますよ、長文失礼しました。 (2018年4月15日 17時) (レス) id: b8417422b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:和寂 x他1人 | 作者ホームページ:http://なし  
作成日時:2018年4月13日 18時

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