5 side R ページ43
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それは一瞬の出来事。
段差に躓いた彼女が前のめりに転びそうになって、俺は咄嗟に腕で抱き止めた。
「……ヒヤッとしたー……」
「……前もこんなこと、ありましたよね」
「駅でね」
「そう!」
「ほら、靴脱げてる」
俺は2、3段下に転がっていた片方の靴を拾い上げ、その場にしゃがみこんで彼女の真っ白な足にヒールを履かせた。
「大丈夫?」
「………」
見上げると、彼女は不思議そうな顔で俺のことをじっと見ている。
「………」
「どうした?」
「私……凄く大切なこと思い出しました」
「何?」
「私たちのこと。昔の……私たちのこと」
「え?どういうこと?」
「大切だから家に帰ったら言う!」
「何だよそれー!」
「だって今急がなきゃだから!ゆっくり話したい!」
「あぁ、そっか」
俺たちは、手を繋いだ。
「俺もAに教えたいことある」
「え!何ですか!?」
「帰ったら分かる。答えはテーブルの上のメモ」
「えぇー!」
そして、二人で笑いながら階段を駆け上がった。
「ねぇ、隆二さん」
「ん?」
「選ばれる人は最初から決まってるって……思ってても良い?」
「え?」
「何でもないです!行こ行こ!」
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Aへ
落ちた椿が綺麗だったので水に浮かべてみました。
あれからずっと、罪の意味を考えてたんだけど、やっぱり悪い意味だけじゃないと思う。
例えば、色んな人を魅了してしまうこと
例えば、こんなに俺を夢中にさせてること
それもある意味罪だと思うけど、悪くないよね?
それと、赤い椿には西洋の花言葉があるの知ってた?
“you are a flame in my heart”
(あなたは私の心の中で光り輝く)
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────追伸
この花言葉は罪な君に捧げます。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月23日 18時