雪椿の頃。10 (ページ27)

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ひなたは小さく頷き、泡の消えたビールを一気に煽った。

「Aさんのことはよく分かりました！私の思い違いですみません！じゃあ、これ何なんですか！？」

「こ、これって？」

「食事です！いつも誘ってくれてますけど、何なんですか！？私は登坂さんの……何なんですか！？」

まさかとは思うけど、ビール1杯で酔った？

口調が、やけに激しい。

「何って言われると困るけど……一緒に居て楽しいから誘ってる」

「この先、私たちどうなるんですか！？」

「分からない」

「分からない！？無責任です！」

「……責任を持って飯を食わせろってこと？」

「そーじゃなくて！」

「そっちも、何で俺の誘い断らないの？」

「……えっと」

ひなたは気まずそうにおでこをかいた。

そこに小さなニキビがあって、まだおでこにニキビが出来るような歳の子とこんなやり取りしてる自分が可笑しい。

「分からない？」

「はい、分かりません……私、好きな人は最初から好きな人なんです。じわじわ友達から好きになるとか、そういう経験ありません。だから、今の自分のこの気持ちがよく分かりません」

「じゃあ、分かるまで飯食えば良いんじゃない？今分かってることは……取り敢えず、ひなたが前髪切りすぎてるってこと」

ひなたは「あっ」と言って手のひらで前髪を押さえつけた。

「切りすぎだろ……」

「昨日の夜中に、自分で切ったんです……」

「急に思い立って？」

「はい……Aさんと差別化を計ろうかと思いまして……」

「なるほど……まぁでも……切りすぎ」

その前髪が、良い感じの長さになる頃には

二人の答えも出てるかもね。