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「おかえり」
退院祝いを自宅に置き、四季とお茶をしてからマンションに帰ると隆二さんはもう帰宅していた。
「ただいま……ピアノ弾いてるの？」
「うん」
隆二さんはピアノの前に座っていて、その姿が素敵で私は彼の後ろに立って首にまとわりついた。
「……邪魔？」
「全然。あ、退院祝いどうしたの？」
「自分の部屋に置いてきました。久しぶりに動いたからちょっと疲れた」
「そっか」
彼の首筋から、甘い匂いがする。
私はそこに鼻をくっつけ、軽く唇を押し当てた。
「今日、トミちゃんと臣さんサッカー観に行くんだって」
「へぇ！爽やか」
「ふふっ。トミちゃん前髪切って可愛くなってた。パッツンで」
「ふーん。今度会ったらからかってやろ」
「何で……」
隆二さんはちょっと笑って、私の腕を柔らかく掴んだ。
「こっち座んな」
導かれるままに隆二さんの腿の上に座り、私はその指先をじっと眺めた。
ピアノのモノクロの鍵盤に、隆二さんの指が流れる。
そうすると、音に彼の色がつく。
これを“音色”って言うのかな。
「良い曲ですね……何の曲？聴いたことない」
「Aのこと唄った曲」
「あ……」
“Aのこと歌ってた”
「あのとき言ってたやつ！？」
「そう」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2018年5月23日 18時
