4 side H ページ23
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事務所の倉庫の前を通り過ぎようとしたとき、人影が見えて俺は思わず立ち止まる。
倉庫の中にはAが居て、綺麗にラッピングされた箱や袋を仕分けしているところだった。
「どうした?プレゼントに埋もれて……ビンゴでもすんの?」
俺が声をかけると、Aは疲れたような顔で振り返った。
「ビンゴじゃないです。これ、退院祝いに頂いたものです」
「……こんなに!?」
「私もビックリ……こんなに祝ってくれる知り合い居ないはずなんですよ……狭く深い付き合いしかしないので……」
「ぽいよなぁ、お前」
「はぁ……でも何とか片付きました!あとは持って帰るだけです……臣さん、今日は何だかスポーティーなファッションですね」
Aに指摘され、俺は「そうそう」と頷く。
「ひなたとサッカー観に行くから」
「ひなた……」
Aは「ひなた……ひなた……」と連呼し、眩しそうな目をして俺を見た。
「……大丈夫か?ひなたって誰のことか覚えてるか?」
「覚えてますよ!“ひなた”とか呼んじゃってることにビックリしたんです!え、もうそういう仲なんですかぁ?」
「違うよ!」
「またまたぁ。そんなお二人にこのグラスキャンドル差し上げまーす」
「ありがとうございまーすって、これお前が貰ったやつだろ!隆二と使え!」
俺がグラスキャンドルとやらをAに突き返すと、彼女はニコニコ笑いながらそれを受け取った。
「サッカー、良いですね。トミちゃんもサッカー好きなんですか?」
「いや、どうだろ……元々A誘おうと思ってた試合なんだよ。ほら、前も行ったじゃん?」
「はい!あのとき楽しかったですよね」
何となく流れでAを誘った試合だったけど、彼女は意外に詳しくて帰り道も盛り上がった。
もう、随分昔の話。
「今ああいう場所連れて行ったら隆二に怒られそうだしさぁ」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月23日 18時