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事務所の倉庫の前を通り過ぎようとしたとき、人影が見えて俺は思わず立ち止まる。









倉庫の中にはAが居て、綺麗にラッピングされた箱や袋を仕分けしているところだった。









「どうした?プレゼントに埋もれて……ビンゴでもすんの?」









俺が声をかけると、Aは疲れたような顔で振り返った。









「ビンゴじゃないです。これ、退院祝いに頂いたものです」









「……こんなに!?」









「私もビックリ……こんなに祝ってくれる知り合い居ないはずなんですよ……狭く深い付き合いしかしないので……」









「ぽいよなぁ、お前」









「はぁ……でも何とか片付きました!あとは持って帰るだけです……臣さん、今日は何だかスポーティーなファッションですね」









Aに指摘され、俺は「そうそう」と頷く。









「ひなたとサッカー観に行くから」









「ひなた……」









Aは「ひなた……ひなた……」と連呼し、眩しそうな目をして俺を見た。









「……大丈夫か?ひなたって誰のことか覚えてるか?」









「覚えてますよ!“ひなた”とか呼んじゃってることにビックリしたんです!え、もうそういう仲なんですかぁ?」









「違うよ!」









「またまたぁ。そんなお二人にこのグラスキャンドル差し上げまーす」









「ありがとうございまーすって、これお前が貰ったやつだろ!隆二と使え!」









俺がグラスキャンドルとやらをAに突き返すと、彼女はニコニコ笑いながらそれを受け取った。









「サッカー、良いですね。トミちゃんもサッカー好きなんですか?」









「いや、どうだろ……元々A誘おうと思ってた試合なんだよ。ほら、前も行ったじゃん?」









「はい!あのとき楽しかったですよね」









何となく流れでAを誘った試合だったけど、彼女は意外に詳しくて帰り道も盛り上がった。









もう、随分昔の話。









「今ああいう場所連れて行ったら隆二に怒られそうだしさぁ」

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2018年5月23日 18時

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