#010.天使 ページ10
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「ばいばい」
後ろから聞こえるAちゃんの泣き声を背景に、僕は家まで走る。
僕は、卑怯な奴だ。
「うっ……うぅっ……」
涙は留まることを知らずに、ポロポロと溢れでて制服に、シミを作った。
もう、白雪に行きたくない。
逃げるようで嫌だけど、母さんに「転校したい」なんて言ってみようかな。
なんて、その時の僕はとんだ馬鹿だった。
☆
「た、ただいま……母さん……?」
恐る恐る、家の扉を開くと。
いつもは母さんがいるはずなのに、今日に限って母さんはいなかった。
「買い物かな……?」
そういえば、今日は父さんは仕事が休みだったはず。
2人でブラブラと、散歩でもしてるのかな。
「うわぁ……酷い顔」
リビングに置いている小さな鏡を見て、僕は少し苦笑する。
「自業自得、か……」
喉が渇いた、と思って冷蔵庫の中にある麦茶を取り出し、コップに注いで飲む。
「母さんと父さん……早く帰って、こないかな」
ジリリリっ!!
家の固形電話が大きな音を立てる。
その音は僕をまた、地獄へと突き落とす合図だった。
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作者名:ゆっ子 | 作成日時:2018年10月24日 21時