#005.天使 ページ5
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「興味本意で声がする方に行くと君がいたし。君、1年?」
澪戸さんの何気ない一言が、かなり心に突き刺さる。
「いや……155センチしかないけど、僕……これでも、中2です……」
「嘘……ごめん」
澪戸さんは目を少し見開いて、謝ってくる。
それがなんだか面白くて、僕は澪戸さんの頭を撫でた。
「え……」
「大人みたいでも……やっぱり、僕より年下なんだね……」
「む、余計なお世話。……コホン、私は澪戸Aって言うの。君は?」
「類……
「類……類、か。よろしくね」
少しだけ……ほんの少しだけ、澪戸さん否、Aちゃんは、口角をあげた。
そして、右手を差し出してくる。
感情がなくて無表情だとか聞いてたけど、ちゃんと笑えるんだ。
なんて失礼なことを、一瞬だけ思った。
下の名前で呼んでくれたことが嬉しかった。
僕のことを下の名前で呼ぶのは、両親と親戚の人達と、妖精のような従妹だけだから。
「……よろしく……Aちゃん」
僕もふふ、と笑い声をあげながら左手を差し出して、握手をする。
これが、少しだけ奇妙な僕とAちゃんが出会った時のことだった。
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作者名:ゆっ子 | 作成日時:2018年10月24日 21時