検索窓
今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:71,849 hit

この世界での犯罪者様__ ページ11




「どこまで判ってるって……」



眉を下げながら言うと、乱歩さんは口の端を僅かに上げた。

跡形も無さ過ぎて逆に恐ろしい乱歩さんの挙動は実にしなやかだ。美しすぎる動作が私にとって逆に不自然。




「君は判って要る筈だよ。僕にすら見えない、先々まで鮮明に」

「乱歩さん以上の人間なんて居る筈が……」

「……残念ながらいるんだよ。それが君だ」



私の耳は乱歩さんの言葉を受け入れた。いや、乱歩さんが受け入れるようにしているんだ。雰囲気と言葉選びが私の脳に合わせてきている。だから嫌でも乱歩さんの言葉は私の中に入ってくる。


全ては乱歩さんの手の平の上。逃れる事なんて絶対に許されない。そう肌で感じた。





「僕の異能は確かに強力だ。世界最高だ。誰よりも凄い。でも僕は起こった事件を裁き、解決することは出来てもこれから起こる事件を『全て』無くすことはできない。何故なら見る事は出来ても、見ようと思うようなアクションが無いから」




乱歩さんの無機質な目は私を確かにとらえている。全てを見透かしていそうな瞳が私を刺した。細部まで覗きこんだ筈なののに、あえて乱歩さんはそれを指摘しない。

その他人行儀な感覚が、親身になりすぎない表情が、嘘で塗り固めている私の心に溶けていく。温度の感じられない雰囲気が、酷く心地いい。心地よくさせている。



(だから拒めない。乱歩さんは、私が好きだと、少なからず好意があると判っているから)





「……この先の展開は、大体」


「そっか」



脳髄まで声が響いたかと思えば、口が緩んだように開き、言葉が押し掛けるように出てきた。


乱歩さんはにっこり笑った。真意の見えない表情は、まさに悪魔。この世界を取り仕切る悪魔。全てを見透かす者。

どう足掻いたって、彼には敵わない。



衝動的に、右手で左手のパーカーの手首の部分をそっと撫でる。




満たされていく感覚がこの上なく気持ち良い。ずっと溺れて居たい。なんて、ドラマチックなことを考えてもいいだろうか。穴の開いた私の心に、乱歩さんの『征服欲』を注ぎ込んで欲しい。


最推しではない。しかし私は彼が大好きだ。このまま、この感情を愛と勘違いしたまま。





__与謝野女医の解体コースをどうぞ→←乱歩さんは感づく



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (53 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
78人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:赤菊 藍 | 作成日時:2017年9月19日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。