244:センラside ページ23
(人間の気配がせーへん場所に来るのはいつぶりやろ)
空は例え様の無い色。
見慣れたマンションやビルだってある訳が無い。
雲の中の様なふわふわとした空間の中、妖だけが宴を既に始めていた。
現世と掛け離れた、力を持った妖しか来れない異空間。
盃を持つより早く、あの争い事以来の仲間たちが俺を見て元気そうで良かったと声を次々に掛けてくれる。
人の形の奴もいれば、こいつの目は何処にあるんだと未だにわからない容姿の妖や動物の妖にまみれた空間で酒を交わすのは、昔なら楽しかった。
でも今はどれだけ美味いと言われている酒を喉に通しても、宴でどれだけ面白い曲芸や話を聞いても笑えない。
(何してるかな)
さっき白かった空は夕焼けに似た茜色になっている。
すぐに様変わりするこちらの世界の空とは違って向こうは今、夜も更けて真っ暗なはず。
寝てるかな。
それともまだ起きてるんやろうか。
鼻声やったけど大丈夫かな。
あまり良いとは言えない体調の時はいつも以上に離れたくなかったのに。
頭の中は、Aちゃんの事だけ。
それでいい。
今はそれが俺の全て。
俺の心配なんてここにいる奴らに分かるはずもなく、次々と酒は注がれていく。
呑み干しても呑み干しても酔えない。
気になって仕方ない。
「姐さん方が来るぞ」
やっぱり来た、とうらたんの笑い声のする方を見ると久しく会っていなかった綺麗に着飾った花魁達が無いのかあるのかわからない足でこちらに向かってくるのが見えた。
「センラさん」
「久しぶりやね」
圧巻と言うべきか。
妖になっても尚綺麗なままの花魁たちは妖にしておくのは勿体ない程の美貌だとは思うけど、それも昔の話。
真っ赤な紅も絢爛な着物も着ない、化粧を落とした幼い顔の部屋着の彼女の方が綺麗で可愛い。
私が注ぐ、私が、と有難いことに目の前では俺の盃に酒を誰が注ぐかで喧嘩をしている。
毎回の事に慣れてはいるものの、今はもうその喧嘩を見ても心を動かされる事は無い。
隣では志麻くんが何で皆してそんなにセンラがええんや、と文句を言いながら自分で盃に酒を注いでいる。
喧嘩から溢れた姐さん達に人間の女と住んでいると聞いた、本当かと矢継ぎ早に質問や何で人間なんかと怒号も飛んでくるようになって、益々俺は早くAちゃんの元に帰りたい気持ちでいっぱいになっていく。
「でも、凄くええ子やで」
見兼ねた坂田の言葉は、俺を更に攻める為の助長の言葉となった。
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あーりん(プロフ) - めめさん» ありがとうございます!甘い二人が書きたい私としては早くこのシリアスを抜けたい所ですがしばしお付き合い下さい!笑 (2019年8月27日 21時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - 更新お疲れさまです(^^)いつも楽しみに待ってます!シリアス展開なのに先が気になってワクワクしていますw更新頑張ってください! (2019年8月27日 16時) (レス) id: 08075475cf (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 怜莉さん» 楽しみに待って頂いているのがすごく嬉しいです!( ;__; )コメント頂けてとても励みになりますー!少しシリアスなお話が続きますがお付き合いよろしくお願いします! (2019年8月27日 15時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
怜莉(プロフ) - 更新ありがとうございます!いつも楽しみで、今か今かと待っていますw個人的になんで話数毎の評価ができないんだーーーーー!!!と嘆いていますwこの先の夢主ちゃんとセンラさんがどうなるか気になります!更新頑張って下さい!待ってます! (2019年8月27日 10時) (レス) id: 0408e10153 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - ぷーさん» ありがとうございますー!これからもよろしくお願いします!あと、課題頑張って下さい!!w (2019年8月27日 1時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あーりん | 作成日時:2019年8月8日 4時