妖たちと暮らす家【浦島坂田船】

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更に狭くなったベットと絡められた腕に緊張して昨日はあまり眠れなかった。
アラームにも目を覚まさず寝てくれててよかったと昨日のように静かに声をかけて会社に向かう。

「Aちゃん、おはよう」

「おはようごさいます」

背後から声をかけられ、肩に手をまわされる。

(でたな、セクハラジジィ...)

毎度毎度、女子社員を見つけては必要以上に近い距離での挨拶。
過度なボディタッチ。

それでも昨今珍しくセクハラだと訴えられないのは会社のお偉いさんというものは相当力があるらしい、会社にいれなくなるのが困るからだ。

すれ違う女子社員たちは哀れんだ目は向けてくれるものの助けてはくれない。
助けて自分にセクハラは及んで欲しく無いもんね。

男性社員ばかりの会社だ、よその会社がどうかは知らないけど我慢しようと挨拶もそこそこに自分の課に向かった。


(なんか、、、今日すごい疲れる)

出した書類はきちんと頼まれた通りできていた。
でもタイミングが悪かったのか契約が上手くいかなかった上司の八つ当たりの対象にされネチネチと遅い、だの仕事が適当だのと小言のオンパレードだった。

自分のデスクに着くとまた増えている書類の数。

こっちを優先してくれと商談のある課内のエース達は無理を言う。


確実に残業確定だ。
お昼だって今日きちんと食べれていない。
お腹が減ったから気が滅入っているのだろうか。

溜息をついて少し目を閉じると、寂しかったと不機嫌にしていた顔を思い出してパソコンに打ち込む作業を再開した。


(帰りたい...)


また寂しかったと慌てて走ってきてくれる？
冷たいのに暖かい腕で、抱きしめてくれる？
ごめんね、って頭を撫でたら笑ってくれる？
ドライヤーをしたら、また甘えてくれる？
大きい身体を小さくして腕を絡めて寝てくれる？


安心したように隣で眠る彼を思い出したら、本当に早く帰りたくなってしまった。

何か甘いものを買って帰ろう。
そして、一緒にゆっくりしよう。
甘えてくれるなら、素直に返そう。


目の前にするとわたわたと挙動不審になってしまうのに、思い出すと胸の奥がぎゅー、っと締め付けられて不思議な気分だ。

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