気づくこと。7 ページ7
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｢なァにぐずぐずしてんだ。Aは別に手前のこと拒絶してねぇんだ。だったら言うことくれェあんだろ。俺達ァいつでも屯所にいる。気が向いたら来いよ｣
｢Aに早く帰ってこいって伝えくるヨロシ。お前の甘いだけのご飯にはうんざりしてるアル。なにより、アイツがいないと万事屋は元気がないネ｣
神楽ちゃんのダルそうな、寂しそうな声が聞こえる。あぁ、悪いことしたな。ちゃんとアイツの口から聞きたいの。
｢やっぱ、好きだなぁ。どんなに私を好いてくれてる人がいても、やっぱ銀時しか考えられない｣
好き。愛してる。会えなくなる度に大きくなっていくこの気持ちを二年間伝えることができず、その気持ちが膨張したまま宙ぶらりんになる。
辛かった。もう迷惑はかけられず、真選組女中として稼いだお金を集めて私は尾張へ引っ越すことにした。
尾張.........今でいう愛知
｢Aちゃん、本当に良いのか？｣
近藤さんと沖田くんに止められる。それでも私は首を縦に降った。
｢...尾張に知り合いがいるんで大丈夫です！｣
かぶき町を離れるとなると苦しいけど、大好きだから離れる。愛してるからここから去るわけで、決して逃げるとか、そんなんじゃない。
｢尾張かィ...そうだな、味噌をお土産にしてくだせェ。そしてその味噌でA姐さんの味噌汁が食べてぇや｣
なんでこうも、不器用な奴が多いのか。遠回しに帰ってこい、と、そう沖田くんは言った。
私は屯所を出て、土方さんを探す。駅まで送ってくれるらしい。パトカーではなく、土方さんの車があった。｢この車で隣に好きな女乗せんのはこれで最後かもしれねぇ。乗れ｣優しい。この優しさに甘えてばかりではいつまでも銀時の事を忘れられない。
｢ありがとうございます。十四郎｣
最後かもしれないから名前で呼ぶ。土方さんは、分かりやすく方を揺らすと、｢うるせェ｣とだけ言った。
｢尾張の方に出張になったら会える暇があったら会ってやるよ｣と、駅に着くとぶっきらぼうにそう呟いた。
｢はは、待ってますね。じゃ、さよなら｣
｢おう｣
踵を返して歩いたその瞬間、甘い香りが鼻腔を擽った。
｢A...？｣
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作者名：す | 作成日時：2021年4月9日 16時
