『Ｗ』

°59° ページ10

オレが話から気をそらしていた間にも言い争いは続いていた





本当に、さっきから何なんだ？
こんな状況でも自分の利益が一番心配なのか‥‥‥




オレたちが命を賭けるって言ってるのに‥‥どうしてそれを信じてくれないんだ？




商会の人と司祭のイタチごっこに嫌気がさしたのだろう

総統が声を上げた


「話を進めよう



次に‥」



顔は横を向いているが、目ではしっかりオレを見ている



「エレン、君に質問がある」



はい、と返事をした


「調査兵団への入団を希望しているようだが‥‥
君はこれまで通り兵士として人類に貢献し『巨人の力』を行使できるのか？」




何だか含みのある言い方だ


「は‥‥はい

できます！」


その含みが何か分からず思わず言い淀んだ




「ほう‥‥！」


総統の顔は髭に覆われていて表情が読み取りにくい




だが、その言葉には何処か挑発するような響きがあってオレは息を飲んだ




傍にあった紙をこれ見よがしにバサっと持ち上げ、総統は言った


「今回の奪還作戦の報告書にはこう書いてある




巨人化直後、ミカサ・アッカーマンめがけて三度拳を振り抜いたと」




言葉の意味がよく分からなかった






オレが、ミカサを、殺そうと、した？





嘘だろう！？



慌ててミカサの姿を探す






どう言うことだ‥‥？

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