『Ｗ』

°53° ページ4

「察しがよくて助かるな







この事態は異例を極め相反する感情論がこの壁の中にひしめいておる

ある者は君のことを




絶滅に導く悪魔と呼び‥‥

またある者は希望へと導く救世主と呼ぶ」







世の中の情報が乏しいせいで今の言葉が何を意味するのかがよく分からない





悪魔も救世主もどっちもどっちだ



できれば人間でいたい





「やはり民衆に君の存在を隠すことは不可能だった
君の存在をいずれかの形で公表せねば巨人とは別の脅威が発生しかねない」








別の脅威、と濁してあるが何を指すのかはよく分かる



壁の中の人間なら暗黙の了解というやつだ









この狭い鳥籠に押し込められた人同士の争い









それらについての論文を父さんが読んでいるのを見たことが何度もある



今回決めるのは君の動向をどちらの兵団に委ねるかだ、とザックレー総統が再び口を開く









「その兵団しだいで君の処遇も決定する









『憲兵団』か

『調査兵団』か」









両者が凄味のある視線をオレに投げ掛けた

°54°→←°52°

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す