『Ｗ』

°69° ページ20

痛みで頭がクラクラする


顔を踏みつけられた




バキッという音がする
鼻の骨でも折れたのだろうか？




「＊×＜%@&」


誰かが何かを言った

痛みのせいで耳鳴りがする上に全ての音がくぐもって聞こえるから全く聞き取れない





だが、その言葉で兵長の動きが止まった




言った人、心の底から感謝




「@×+〒」



リヴァイ兵長が何かを言った



言葉は聞き取れなかったが、誰が発したのかはかろうじて分かった




オレは全身の細胞が訴えかけてくる痛みを無視し、耳の神経を尖らせる




不意に、顔から足が離れた





オレは力無く丸くなった



「危険だ」


今度はちゃんと聞こえた



「恨みを買ってこいつが巨人化したらどうする」
さっきと同じ声だ




暫く硬い沈黙が続く


「何言ってる」


今度は兵長の声だ



髪がぎゅっと摑まれ、またオレは頭を上げる羽目になった




「お前らはこいつを解剖するんだろ？」

前言撤回



喋ってたやつ、一回くたばれ





はっ‥‥‥と兵長の嘲るような低い声が聞こえた



さっきの奴からの返事は返ってこない




「こいつは巨人化したとき力尽きるまでに20体の巨人を殺したらしい」




オレは巨人を20体も殺したのか！？
一瞬だけ自分が僅かに誇らしくなった



「敵だとすれば、知恵がある分厄介かもしれん

だとしても俺の敵じゃないが‥‥‥」




表情は見えないが、上から軽蔑とも取れるような冷たい視線が降り注いでいるのはよく分かる




敵、か


「お前らはどうする？

こいつをいじめた奴らもよく考えた方がいい
本当にこいつを殺せるのかを、な」



会場に音が戻ってきた



皆が身動ぎしたのだろう






「総統‥‥‥ご提案があります」




冷静、というよりは事務的な声が言った




きっとエルヴィン団長だろう




確かめたいが、まだ顔を上げられるほど痛みが治まっていない





状況としては調査兵団が優ってきているのだろうか

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