後悔を知る ページ25
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『……送信、っと』
仙台駅から新幹線に乗り込み数分がたった頃、勢い良く走り抜ける列車とは裏腹に静かで落ち着きのある車内で、私は独り言のように呟いた。
スマホの画面に映るトークアプリに送信した簡潔なメッセージに、我ながらあっさりしているなと考える。
「……お友達にでも送ったの?」
『ああ、はい。さすがに何もなしにお別れじゃ、味気ないかなと思って』
隣で喜久福を頬張っていた五条先生が、私のスマホを覗き込むようにして言った。
それに対し、私は苦笑いを浮かべながら言葉を返す。
そう言えば、あの学校に私という存在が居なくなった時の事を何も考えずに来てしまった。
昨日やりかけで放り出した仕事、どうなっているかな。
副会長がこんな形で抜けてしまったから、会長はきっと怒っているんだろうな。
私のことを一番理解してくれていた友人は、私の薄情さに呆れきっているよな。
……なんて、思い出したらひっきりなしに出てくる後悔。
『……私、高校に入ってから色んなことを後悔してました。部活はテニスじゃなくて吹奏楽にすればよかったとか、押しに負けて生徒会なんか入るんじゃなかったとか。他にも色々』
私達の前の座席ですやすやと寝息を立てている悠仁の頭を眺めながら、今まで誰にも話したことのなかった弱音を吐露する。
なんでこの人にそんなこと喋っているのかは自分でも良く分からなかったが、なんとなく彼なら全て水に流すように忘れ去ってくれる気がした。
『私の選択一つ一つが結果として悪い方向に事を進めていたんじゃないかって思うと、なんだか怖くって』
「そうか。……君も君なりに、たくさん苦労したんだね」
『……苦労なんて、そんな大それたようなものじゃありませんよ。こんなの、ただのワガママです』
実際、こうやってあなたに話を聞いてもらっていることもワガママなんだ。
私はたぶん、自分が思っている以上に子供のままなんだろう。
カエルになりきれない中途半端なオタマジャクシみたいに、周りに追い越された私は一人寂しく池の中に取り残されている。
「でもまあ、それを自分で分かっているなら僕はあまり心配いらないと思うけどね」
『……それって、どういう』
「悩みながらだって、他人を頼る術を身に付けていくことくらい君にもできるでしょ?」
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いか焼き - 好きです!!! 最高すぎます、、、応援してます!今から2を読んできます!楽しみすぎる…! (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 宿儺の声が頭の中で聞こえたらワイある意味死んでう( ´ཫ`)って思いながら見ました←めっちゃ面白いです!!応援してます( ˃ ˂ ) (2022年1月25日 0時) (レス) @page31 id: dce21dc0b1 (このIDを非表示/違反報告)
古椎エゴ(プロフ) - Tomorrowさん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスしていたみたいです!知らせていただき助かりました! (2022年1月24日 17時) (レス) id: c3c7b307dc (このIDを非表示/違反報告)
Tomorrow(プロフ) - コメント失礼します。とても面白くて何度も読み返してます!ところでなんですけど、祥子ではなく硝子だった気がします!間違えてたら申し訳ないです! (2022年1月24日 17時) (レス) @page30 id: 81fe567fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白いです!宿儺推しなのでこの話はとても好きです!がんばって書いてくださいね!応援しています! (2022年1月23日 23時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀛 | 作成日時:2022年1月22日 17時