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決意 ページ21

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酷く重苦しい静かな空間に、カチャカチャと骨を拾いあげる音だけが響いている。

私は目の前で表情乏しく箸を動かし収骨していた悠仁を、ただ静かに見つめていた。






「宿儺が全部消えればさ……呪いで苦しむ人も、少しは減るかな」






扉の横の壁にもたれかかり何も言わずこちらを眺めていた先生に向けて、悠仁がゆっくりと口を開いた。


私はそれを聞き流しながら、ぼんやりと人型に集められた骨へと目を移す。

昨日まで生きていた人とは思えないほど小さく、真っ白なそれ。






「……もちろん」






五条先生の声と共に、収骨を終えた骨壷の蓋が音を立てて閉められた。

悠仁は数秒考えるように壷を見つめた後、ずっと俯いていた顔をようやく先生の方へ向ける。






「……あの指、まだある?」






その言葉を聞いた五条先生の手から、ゴツゴツとした赤紫色の指のような塊が悠仁の手の中に渡される。



もちろん私は姉として、これ以上悠仁に不幸になって欲しくないと思っている。


それでも、あいつが考え抜いて導き出した答えを否定することなんてできるわけがない。



……野暮やことはするなと、なぜだか不思議とじいちゃんに引き止められた気がした。






「改めて見ると、気色悪いなぁ」






悠仁はそう言って、まじまじとその塊を観察する。


確かに、私も初めてちゃんと目視したが本当に指だ。


……それもかなり大ぶりの。飲み込めるのかと心配になるような大きさだった。






「……A、こっちにおいで」






悠仁に指を渡した後、五条先生は後退りしながら私を呼んだ。

もしもの時のため、ということなのだろう。それにたぶん、私の体のことも心配してくれている。


ぎゅっと肩を掴まれ、おもむろに体を引き寄せられた。






「大丈夫、僕が着いてる」






五条先生の胸板が、背中に当たる。

どこか剽軽で掴めないのに、こういう時は素直に彼のことを頼もしく思えるのは、私が人の優しさに弱いからだろうか。




_______部屋の中に、緊張感が走る。



悠仁は大きな口を開けて、一口で「それ」を飲み込んだ。






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器→←煙



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いか焼き - 好きです!!! 最高すぎます、、、応援してます!今から2を読んできます!楽しみすぎる…! (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 宿儺の声が頭の中で聞こえたらワイある意味死んでう( ´ཫ`)って思いながら見ました←めっちゃ面白いです!!応援してます( ˃ ˂ ) (2022年1月25日 0時) (レス) @page31 id: dce21dc0b1 (このIDを非表示/違反報告)
古椎エゴ(プロフ) - Tomorrowさん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスしていたみたいです!知らせていただき助かりました! (2022年1月24日 17時) (レス) id: c3c7b307dc (このIDを非表示/違反報告)
Tomorrow(プロフ) - コメント失礼します。とても面白くて何度も読み返してます!ところでなんですけど、祥子ではなく硝子だった気がします!間違えてたら申し訳ないです! (2022年1月24日 17時) (レス) @page30 id: 81fe567fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白いです!宿儺推しなのでこの話はとても好きです!がんばって書いてくださいね!応援しています! (2022年1月23日 23時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年1月22日 17時

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