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無神経 ページ13

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「……だからどうという話でもない、が」






完全に、形勢が逆転した物だと思い込んでいたのは、どうやらアイツも同じだったらしい。


それでも、目の前で揺れる白髪には砂埃の一つもついていなくて。

あろう事か、彼の周りでは飛んできた瓦礫が宙に浮いて静止していた。






「……7、8、9。そろそろかな?」






_______ドグンッ



場を制した声と共鳴し、再び激しく鼓動が脈打つ。

それに釣られるように私の息はだんだんと早くなり、また苦しさが増した。


せめてもの救いは、私の背中を青年がさすってくれていることくらいだ。






「……お、大丈夫だった?」






それから暫くして、私の動悸が収まった頃にはいつも通り少し気の抜けたような悠仁の声が聞こえてきた。

息を整えながらゆっくりと顔を上げれば、やはり先程まで浮かび上がっていた模様と瞳は消えている。






「驚いた、本当に制御出来てるよ!」


「でもちょっとうるせーんだよなあ。アイツの声がする」






悠仁はペチペチと自分の頭を叩きながら、目隠しの男性に向け言ってみせる。


一体悠仁はヤツに意識を奪われている間、どこで何を考えていたのだろう。

そんな月並みの疑問が私の頭の中を支配した時、目の前をカツカツと進む黒い影が目に入った。






「それで済んでるのが奇跡だよ」






ピシッという音と共に、悠仁の額に打ち付けられた男性の指。

するとどうした事か、悠仁は意図も簡単に意識を失い、そのまま脱力したように崩れ落ちた。


……すかさず、男性は悠仁の体を支えるように抱えてみせる。






『っ、悠仁ッ!』


「大丈夫、気絶させただけさ。随分この子に固執しているみたいだけど、もしかして君の彼氏?」


『……弟です』


「嘘、マジで?全っ然似てないね!」






やけにフレンドリーな物言いに、少し苛立ちを覚える。

確かに、似てないとは良く言われるし自分でも思う時あるけど。


なんと言うか、他人にそこまで言われると何となくムカつく。






「……さてと。残る問題は、君の方だ」






悠仁を片腕に抱えたまま、男性はこちらに少しずつ近付いてくる。

なんとなく良い気はしなかったが、どうせここで逃げ出したところで捕まるのがオチだし、そもそも使えない体のせいで逃げることすらできない。



全てを悟った私は、彼の言う事を聞くべく大人しく体の力を抜いた。







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いか焼き - 好きです!!! 最高すぎます、、、応援してます!今から2を読んできます!楽しみすぎる…! (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 宿儺の声が頭の中で聞こえたらワイある意味死んでう( ´ཫ`)って思いながら見ました←めっちゃ面白いです!!応援してます( ˃ ˂ ) (2022年1月25日 0時) (レス) @page31 id: dce21dc0b1 (このIDを非表示/違反報告)
古椎エゴ(プロフ) - Tomorrowさん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスしていたみたいです!知らせていただき助かりました! (2022年1月24日 17時) (レス) id: c3c7b307dc (このIDを非表示/違反報告)
Tomorrow(プロフ) - コメント失礼します。とても面白くて何度も読み返してます!ところでなんですけど、祥子ではなく硝子だった気がします!間違えてたら申し訳ないです! (2022年1月24日 17時) (レス) @page30 id: 81fe567fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白いです!宿儺推しなのでこの話はとても好きです!がんばって書いてくださいね!応援しています! (2022年1月23日 23時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年1月22日 17時

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