面談 ページ35
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「……さ、入って入って」
五条先生に促され足を踏み入れたその場所は、薄暗くぼんやりとロウソクの火だけが辺りを照らす静かで厳かな雰囲気を醸し出している。
どことなく漂う緊張感からか、私の背は無意識のうちにピンと真っ直ぐ伸びていた。
「言われた通り、姉の方も連れて来ましたよ」
正面を見据え、先生が言う。
彼の目線の先には、たくさんのぬいぐるみ達に囲まれながらせかせかと針を進める体格の良い男性が一人。
多分、この人が学長なのだろう。暗がりでサングラスをしているため、五条先生と同じく目の表情は読み取れない。
ただ彼と違うのは、全体的な表情すら乏しいということ。
妙な威圧感を感じた私は、いつもより多めに瞬きをした。
「……君が、虎杖Aだな」
『!……はい』
低く太い声が辺りの静寂を絶つように響く。
いきなり名前を呼ばれた私は、その声に答えるように返事をした。
緊張して体が強ばる。下手したら、高校に進学した時に受けた入試の面接試験よりキツイかもしれない。
「私は夜蛾正道。
_____“虎杖A。君は呪術高専に何をしに来た”
面と向かって放たれた言葉に、私は目を見開く。
……そう言えば私は、何のためにここに来たんだ。
大きな一つの要因とすれば、宿儺に呪力を分け与えられたから。
得体の知れない体のまま普通に暮らすわけにはいかないと説明され、覚悟を決めてこちらに足を踏み込んだつもりでいた。
でも違う。それは私がここに来た経緯であって、決して理由にはなっていない。
『……悠仁を、一人にはできなかったので』
「それは弟に対する同情か?君は自分が置かれている状況を、何一つ理解していないようだな」
咄嗟に出た言葉に、厳しい答えが返ってくる。
悠仁のことを助けたいのは本心だ。姉として、何よりもあいつの力になりたいし、唯一の味方として在りたい。
でも、それを同情と言われてしまえばそれまでだと思った。
今の私は自分のことを棚に上げ、例え弟であれど他人を心配し憐れむことができるような、大それた立場には居ない。
《つまらん……今のオマエは、この世の何よりも惨めだ》
ぐちゃぐちゃになった頭の中で、アイツの呆れ果てたような声が聞こえた。
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いか焼き - 好きです!!! 最高すぎます、、、応援してます!今から2を読んできます!楽しみすぎる…! (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 宿儺の声が頭の中で聞こえたらワイある意味死んでう( ´ཫ`)って思いながら見ました←めっちゃ面白いです!!応援してます( ˃ ˂ ) (2022年1月25日 0時) (レス) @page31 id: dce21dc0b1 (このIDを非表示/違反報告)
古椎エゴ(プロフ) - Tomorrowさん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスしていたみたいです!知らせていただき助かりました! (2022年1月24日 17時) (レス) id: c3c7b307dc (このIDを非表示/違反報告)
Tomorrow(プロフ) - コメント失礼します。とても面白くて何度も読み返してます!ところでなんですけど、祥子ではなく硝子だった気がします!間違えてたら申し訳ないです! (2022年1月24日 17時) (レス) @page30 id: 81fe567fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白いです!宿儺推しなのでこの話はとても好きです!がんばって書いてくださいね!応援しています! (2022年1月23日 23時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀛 | 作成日時:2022年1月22日 17時