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136話 ページ15

『……別に、あなたのことが嫌いなわけではないですよ?ただ、その……少し恥ずかしいと言いますか……』

「そうですか。なら、竹谷先輩との一件は?」

『あれは不可抗力です。お互いどうしようもなかったんですよ』


そう言うと、少し不満げだった彼の顔は、いつもの無表情に戻った。


「まあ、それなら……分かりました、許します」


やっと離れてくれたことに安心する一方、新たな疑問が湧いてきた。

……私はなぜ、喜八郎くんに許されているのでしょうか。

これだと、まるで私が彼に迷惑をかけたみたいだ。


「……まあ、竹谷先輩はまんざらでもなかったと思いますけどね」

『……え?』


どういうことかと聞こうとしたとき、彼がさらなる爆弾発言を投下した。


「代わりに、今度町に付き合ってください」

『……はい?』

「髪紐の予備を買いに行きたいんです」

『いや……1人で行けばよくないですか?』

「僕1人で行ってもつまらないじゃないですか」


まあ……それも一理ある、か。

休日なんかは事務の仕事も少なくてどうせ暇だから、行ってもいいかもしれない。


『……分かりました、いいですよ。お付き合いします』


そう返事をすると、彼は見るからに顔を明るくした。

出会った頃よりかなりいろいろな表情を見せてくれるようになった気がする。

そう思った時だった。


「A!……と喜八郎?」

『あ、久々知さん』


探しに来てくれたんだろうか。

ほっとしたような表情をしている。


「よかった……心配したぞ。で、喜八郎はなんでここに?」

「……邪魔が入りましたか。それでは、僕はそろそろ失礼しまぁす」

『あ、ちょっと!その前に私を穴から出してくださ……』

「Aさん、約束忘れないでくださいねー」


そう言うと、私を引き上げることなくさっさと自分だけ上がって行ってしまった。


『……久々知さん、その……助けてください』


負けず嫌いの私は人に頼むのは癪だが、やむを得ず、だ。


「ちょっと待ってて。縄梯子を持ってくるから」


そう言ってどこかに行ったかと思うと、すぐに縄梯子を持って戻ってきた。

さすが五年生だ。

彼が持ってきてくれた縄梯子を登って穴の外に出る。


『やっと出られた……』

「全く、喜八郎め……大丈夫か?」

『はい、なんとか。それよりも……あなたはなぜここに?』

「ああ……探してたんだ。他の上級生も探してる」


……何故だろうか。

私は彼らに対して酷いことを言ってしまったのに。

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ハル - 凄く面白かったです!大変な時期だと思いますが、これからも応援してます‼︎ (3月22日 19時) (レス) id: 0fe5dcb2f7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し46937号(プロフ) - 初めまして!素敵な夢小説をありがとうございます!もしよければ忍術学園全員出動の段書いていただけませんか? (2月27日 22時) (レス) id: f091a3aa7a (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - はじめまして。天女になった蝶柱第1章から見てます。リクエストなんですけどヒロインちゃんと1年は組がお茶会を開きそれに1年い組とろ組とそれぞれのクラスの先生が参加するが見たいです。 (2023年3月6日 18時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - 蘭檸さん» ありがとうございます!亀更新ですが、これからも少しずつ書いていくのでぜひ読んでくださると嬉しいです! (2023年1月14日 18時) (レス) id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
蘭檸(プロフ) - 面白くて一気に読んでしまいました!更新楽しみにしてます! (2023年1月2日 16時) (レス) @page16 id: 9728c679fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:麗羅 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aji391/  
作成日時:2022年4月25日 22時

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