愛するための知識―【パチュリー・ノーレッジ】 ページ14
太陽の光が届かないこの場所、大図書館は膨大な数の本が蔵書されている。
外の世界から流れ着いた小説や漫画、もちろん魔道書だってある。そんな中、恋愛小説を読んでいるAはテーブルを挟んで座るパチュリーにある疑問を問いかけた。
「あのさ、恋と愛の違いってなに？」
「…どうしたのいきなり」
「いや、この本読んでてちょっと気になって」
「恋は奪うもの、愛は与えるもの。本からの情報だから正しいかどうかまでは私も分からないけど、おそらくそんな感じだと思うわよ」
「へぇ…なるほど」
恋と愛の違いを学んだAは恋愛小説を読みながら、『奪って与える…』と何度も復唱していた。
やけに小説を熱心に読んでいるAを若干違和感を感じつつも、パチュリーは魔道書解読に戻る。
それから少ししてAが思い出したように口を開く。
「あ。ねえ、パチュリー」
「今度はなに？」
「私はパチュリーに奪われたっぽい」
「…なにが、よ」
「さっき教えてくれたじゃんよ。恋は奪うもの、愛は与えるものって」
「……え？」
Aの突然の告白(？)にパチュリーは硬直し、魔道書を閉じる。『冗談でしょう？』と問うも、Aは真剣そのものであるため、首を横に振る。
「この期に及んで冗談なんて言わないって」
「じゃあそれは告白、と受け取っていいのかしら…？」
「まあ、恥ずかしいけど、告白みたいなもんかな」
頬を赤く染めるAは恥ずかしさからか顔を背け、黙り込む。
「あの……恥ずかしくてパチュリーの顔見れないから、その…返事とかはあとでいいんで、今は手を繋いでもらっても…？」
控えめにお願いを乞うAの手を何も言わずに握り、何の気無しにパチュリーは言う。
「…私、貴女のそういう所、好きよ」
「ばッ…なんで今言うんだよ、それ…！」
空いている左手で顔を隠し、余計に頬を赤く染める。赤くなったAを見てパチュリーは不意に笑みが零れ、心の中で『案外照れるとなにも出来なるのね』と、Aの意外な一面を見つけたことに喜びを感じつつ、Aに惚れてしまったことに想いの衰えを感じてもいた。しかしそれが嫌なものというわけでもなかった。
―Aが帰ってから、自分の言ったことをふと思い出した。恋が奪うものなら、愛は与えるもの。
ならばそれに従うのも悪くはないだろう。彼女となら――Aと一緒ならば、このホコリくさい図書館から出てもいいかもしれない。
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作者名：狂霧@HAL | 作成日時：2017年12月1日 17時
