空を駆ける白黒の流星―【霧雨魔理沙】 ページ13
高い木の上で満天の星を眺め、ため息を零す。
特に悩み事とか困っているわけではないけれども、ただ一つだけ…つっかえるものがあった。霧雨魔理沙、普通の魔法使い。そんな彼女のことが気になる。ただそれだけでため息が零れる。そして幸せも逃げていく。
「おい、そんなとこでなにやってんだ？」
声のする方へ顔を向ける。箒に乗り、帽子を押さえながら言う彼女こそが魔法使いの霧雨魔理沙。
「見て分かるだろ。空を見てるんだよ」
「あぁ、今日は空が晴れてたからな。星好きのやつにはたまらんだろうな」
二カッと笑い、Aの隣に箒を付ける。箒に乗ったまま魔理沙は続ける。
「最近お前の姿をよく見かけるが、一体なにしてるんだ？」
「いや、特に何も。ただ暇だから歩いてるだけ」
「…つまらんやつだな。もっと楽しいことはしないのか？」
「その楽しいことを教えてほしいくらいだよ」
自身が被っていた帽子をAに被せ、肩に手を乗せて言う。
「私の家に来るとか。どうだ？氷龍さん」
「……遠慮しとくよ、魔法使いさん」
「おいおい、つれないなぁ。せっかく誘ってやってるのに」
頬を膨らませ、家に来いよと肩を揺さぶる。行きたいのは山々だが、少々抵抗がある。それが何でなのかはよく分からないが、この胸のつっかえに繋がってるんじゃないかと思ってる。それに魔理沙の笑う顔を見られるだけで私は充分だ。
「時間があるときに行くよ。今日はもう夜だし、早く帰らないと妖怪に襲われるぞ、魔理沙」
「ッ……私だって自分の身は自分で守れるさ。甘く見るんじゃないぜ」
頭に被せられた帽子を魔理沙に返しながら悪戯で、でも本気で言ってやった。
「……なら、今から襲おうか、魔理沙のこと」
「お、お前ッ…それは、その…」
暗い状態でも魔理沙が頬を赤く染まっているのが分かった。なぜか私は嫌悪感に包まれ、すぐに冗談だと誤魔化した。そうでもしないとこの場を乗り切れそうになかったから。
「そ、そうだよな！冗談、だよな！脅かさないでくれよ、A」
自分にそう言い聞かせながら、今日はもう帰るぜと帽子を被り直して、そう言った。手を振る魔理沙に手を振り返し、夜空に姿を消していく魔理沙を見送った。
もう一度星を眺め、ため息を吐く。吐き捨てるように、呟くように私は言った。
「まいったな……これじゃ胸のつっかえは取れないよ…」
愛するための知識―【パチュリー・ノーレッジ】→←たまには甘えたい―【チルノ】
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作者名：狂霧@HAL | 作成日時：2017年12月1日 17時
