△ とんでもねぇ夢主だ ページ6
「善くんみーっけ」
じいちゃんの家でお世話になるようになってから、こうして善逸を探し回るのがモーニングルーティーンの一部になっていた。
「ヒェッAちゃん、俺見つけるの早くなったね……」
善逸はコアラよろしく木にしがみついたまま振り向いた。鬼を見るような目やめろや。
「修行しよーぜ」
「いくらAちゃんの誘いでもやだー!!!」
やれやれ。今日もこれか。こうも毎日同じことを続けていると、いくら推しと言えど、対応が面倒くさくなってくる。
「……俺だって、自分が他人に迷惑をかけてるってわかってる」
あ。やべ。本人が望もうと望ままいと、人の心の音が聞こえてしまう耳は知らなくていいことも善逸に教えてしまう。
「いい加減変わりたい。ちゃんとしたい。
周りに迷惑をかけたくない。
呆れられたくない。
人並みになりたい。
もっと上手に楽に生きたい。
いつもそう思ってる。思ってる。
思ってる、だけで……できないんだけどさ」
わかるよ。痛いくらいわかる。だってわたしもいつもそう感じてるもの。人並みになれなくて、あまりに不器用で、生きるのに向いてないよね、わたしたち。だけどそれでも生きてたい。
「じゃあさ……じゃあさ、善逸が泣いたらわたしが慰めてあげる」
「……俺が逃げたら?」
「信じて待っててあげる」
「……俺がAちゃん以外の女の子とちゅーしてたら?」
「その女を埋める」
「とんでもねぇ」
「そうだよ、とんでもねぇ女に好かれちゃったんだよ、善逸は。恨むなら自分の女好きさを恨むことだね」
善逸の鼻をすする音がして、そこにふつりと緊張の糸がとぎれたみたいな、笑い声が続いた。参りました。降参です。木からおりた善逸は両手をあげて見せた。
ほらね。じいちゃんの縄や罠なんかなくたって、Aちゃんと、Aちゃんのもつ言葉だけで、俺はたやすく連れ戻されてしまうのだ。
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あき - うわぁ、HUNTERHUNTERも書いてくれるなんて……🥹🥹 (2023年1月30日 14時) (レス) @page50 id: 099b645bba (このIDを非表示/違反報告)
まっひぃ - 善逸のそういう所好きだぁー!😁かわええ (2021年11月11日 15時) (レス) @page48 id: d24aae8d9d (このIDを非表示/違反報告)
ひとみちゃんDX(プロフ) - 今まで読んだ中で一番好き! (2021年10月29日 12時) (レス) id: 0e9cb43b28 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ割り人形 - わあわあ好きだあ途中どうなったのってなったけどちゃんとハピエンで良かったああうわん嬉しすぎて嬉し涙が…というかヒロ◯カの小説も書いていらっしゃるなんて!今すぐ読んできます!あ、この作品めっちゃ良かったです!好きです!(唐突の告白 (2021年9月12日 7時) (レス) id: 7c01fc8068 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧 sud .(プロフ) - とっても素敵でした。 (2021年9月9日 15時) (レス) id: a463316156 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希 | 作成日時:2019年10月4日 22時