△ きみはやさしさに弱かった ページ43
わたしは善逸の問いに何も返すことができない。わたしの薄っぺらい慰めなんて気休めにもならないだろう……もしかしたら、この真っ暗闇は善逸の精神世界の入口なのかもしれない。だったら、言うべきことは、決まっている。わたしが善逸へ掛けられる言葉の、精いっぱい。
「善逸、ちょっと、聞いてほしい。信じてもらえないかもしれないけど、どうか聞いてほしい。
いつかきみは、一人のおじいさんに拾われる。とんでもなく厳しくて、やさしいひと。そこには兄貴みたいな人もいるの。そしてある日、新入りが入ってくる。
ソイツはね、性格あんまりよくないし、メンタル弱いし、友だち少ないし、頑張っても人並みにできないことが多いし、役に立つほどの長所もないし、そんな自分が嫌で嫌で…………
そんなヤツも、善逸と暮らすようになる。
修行が嫌で一緒に逃げ回ったり、お花見デートしたり、週一でだんご屋さんへ行ったり、夏祭りで金魚すくいの勝負をしたり、じいちゃんと一晩中花札したり、一緒に海へ遊びに行ったり、兄貴的なヤツと朝から走り込みしたり、山一面の紅葉を見に行ったり、じいちゃんに怒られて屋敷中を掃除したり、冬には庭の雪で遊んだり、初詣に行ったり、いつも笑っていられるような、そういう毎日を送るんだ。
善逸は胸を張ってしあわせだって言うようになる」
「……本当に?」
「本当だよ。嘘じゃない。この目で見た」
「……」
その瞬間、目の前が明るくなった。朝日だ。△柄の羽織の、まばゆい金髪の、可愛い笑顔をした、わたしのよく知る善逸がそこに立っている。地平線が黄金色にひかる。善逸の金髪も、綺羅綺羅と色づいていく。キラキラと金粉をふりまきながら、日は登ってくる。役目を終えた月はようやく長い眠りにつく。
「そっかあ。よかった。いつか、いつかきっと、俺はしあわせになれるんだね」
「……うん。善逸は絶対に報われる。しあわせになれる日が必ず来る。だから、わたし、未来で待ってるね」
△ あなたがいるから、それだけで→←△ 大丈夫、大丈夫だから
2161人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あき - うわぁ、HUNTERHUNTERも書いてくれるなんて……🥹🥹 (2023年1月30日 14時) (レス) @page50 id: 099b645bba (このIDを非表示/違反報告)
まっひぃ - 善逸のそういう所好きだぁー!😁かわええ (2021年11月11日 15時) (レス) @page48 id: d24aae8d9d (このIDを非表示/違反報告)
ひとみちゃんDX(プロフ) - 今まで読んだ中で一番好き! (2021年10月29日 12時) (レス) id: 0e9cb43b28 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ割り人形 - わあわあ好きだあ途中どうなったのってなったけどちゃんとハピエンで良かったああうわん嬉しすぎて嬉し涙が…というかヒロ◯カの小説も書いていらっしゃるなんて!今すぐ読んできます!あ、この作品めっちゃ良かったです!好きです!(唐突の告白 (2021年9月12日 7時) (レス) id: 7c01fc8068 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧 sud .(プロフ) - とっても素敵でした。 (2021年9月9日 15時) (レス) id: a463316156 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:有希 | 作成日時:2019年10月4日 22時