【Extra Dream】君を想って駆けた道 ページ34
『漣ジュン』
『そういえば、茨。』
「はい？」
『あー……結構前に女性連れて玲明来てたじゃないっすか。あの人は結局何だったんです？』
一年前。
『Eden』としてユニット活動を始めたオレは、ずっと頭の隅にあった女性のことを思い出す。
オレの言葉を聞いて、少し表情を崩す茨。
「彼女は自分の遠縁の関係者です。何やら芸能界に興味があるらしく、『コズミックプロダクション』への就職を視野に玲明へ見学に来ていた次第です。」
『あ、なるほど。オレらより年上ですか？』
「いくつか年上だったと記憶していますが……急にどうしました？」
『いや……なんつーか、気になって。』
忘れられなくて、とは言えなくて。
オレは軽くごまかして、茨から目をそらす。
「……彼女、素直で純粋な方ですよ。」
『何ですか突然』
「いえ、そういうことも聞きたいのかと思って。」
『……』
見透かされている。
玲明で、たったひとりの狂気じみた優しさにしか触れられなかった。
そんな折に、あんな純粋に「すきです」と言われたら、縋りつきたくなるほど愛おしくなる。
また会えないかななんて、校門を通り過ぎるたび思ったりして。
『……茨的には、オレがそういうことにうつつを抜かすのはいただけないんじゃねぇですか？』
「そうですね。しかし、ジュンはそれでアイドル活動を疎かにはしないでしょう。」
『え、結構信頼してくれてんだ。』
「そんな役立たずに背中を預ける間抜けに見えますか？ ナポレオン曰く、『真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である』……自分も、この論には概ね納得できます。」
何も興味なさそうに呟いて、茨は伸脚を始めた。
もうすぐおひいさんとナギ先輩のふたりと合流して、ダンス練習をする予定だ。
そんな茨に合わせて、オレも隣で伸脚する。
「名前は仁坂Aさん。ジュンの歌声に大層感動していましたよ。」
『Aさん……いきなり名前で呼んだらキモいっすかね？』
「彼女から何と呼ばれたかによるのでは。Aさんの親戚は芸能界にもわりといるので、名前で呼ぶほうが区別はしやすいと思います。」
『えー……今度はいつ会えっかな。』
「……さあ。」
言葉をどこか濁す茨に、少しだけ口をとがらせる。
もしかしたら、これからもう会えないとかある？
『(あーやべぇ、顔見たい……)』
また、あの綺麗な瞳に映りたい。
また、好きと言ってもらいたい。
おかしいのかな、オレ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 391人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
生しょうが(プロフ) - 錦さん» うわぁ、またまたそんな萎えるミスを……ご指摘ありがとうございます……！ (1月6日 17時) (
レス) id: 3da0e90f37 (このIDを非表示/違反報告)
錦(プロフ) - ページ22「バセンジー」に名前変換ミスらしき単語が…((ｺｿｯ (1月6日 13時) (レス) @page22 id: 7f2cf0d803 (このIDを非表示/違反報告)
生しょうが(プロフ) - にとろさん» 小さな奇跡が……！解釈一致すごい嬉しいです！こちらこそ楽しんでいただきありがとうございました！ (10月24日 23時) (レス) id: 9fefad8449 (このIDを非表示/違反報告)
にとろ - 初コメ失礼します‼夢主ちゃんの誕生日と私の誕生日が同じで、ついマジかよってなりました。ジュンくん解釈一致で堪らなく好きです！最高な作品ありがとうございます😊 (10月13日 23時) (レス) @page2 id: 5c45186ae9 (このIDを非表示/違反報告)
生しょうが(プロフ) - 綾さん» うわぁぁ自分も大好きです！！！読んでいただけてめちゃくちゃ嬉しいです〜！きゅんきゅんできるような小説作れて良かったです……笑 (8月15日 16時) (レス) id: 9fefad8449 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：生しょうが | 作成日時：2023年4月4日 0時
