隣にいてほしい。《瀬名泉》�� ページ14
____なんか、さむいよ。
「なぁに泣いてんの。」
『…泣いてないし、』
「すぐにばれる嘘やめなよねぇ？ あーもう、こすんない！」
むぎゅっ、と目の前の彼は鼻を摘んでくる。
アイスブルーの瞳に私を映して、まるで妹を見るかのように微笑んだ。
「今日は練習だったんでしょ？ 何かあった？」
『別に…何でもないっ！』
我ながら、面倒くさい女だと思う。
小学生の頃からの幼馴染に、八つ当たりをしてしまうとは。
「何それ。何でもないなら、わざわざ俺の家の前で泣かないでよね。」
『しゃがみこんだ先が泉の家だっただけ。』
「それはさすがに俺のこと好きすぎでしょ〜…。ま、上がれば？」
私の手を引いて、泉は玄関まで招き入れる。
靴を脱いだ私をまた引っ張って、とうとう泉の部屋に入ってしまった。
小さい頃から見慣れた部屋とはいえ、意図せず身体は縮こまる。
「はい、食べな。」
『……何これ、ケーキ？』
「そ。」
『貰ったんだ、その子も可哀想に。』
泉が自発的にケーキなんて買うはずがない。しかもホールで。
あげるファンも泉のことわかってなさすぎ、って、いや私はバカか。なに怒っちゃってんの。
「違うよ、俺が作ったの。勝手に誰かを哀れまないでくれる？」
『(あー、遊木くんね。それもそれで可哀想だわ。)』
「憐れむような目で見てくんじゃないよ。」
とりあえず『いただきまーす』と合掌してから一口食べる。
もぐもぐと咀嚼する私に、小さくため息をつく泉。
『ねぇ泉、』
「なに、文句なら受けつけてないけど？」
『私、さむいんだって。』
そう言うと、泉は少しだけ驚いたように目を見開いた。
私はバンドのギターを担当していた。
一緒に『世界一のアーティストになろう』と誓い合った。
誓い合っていた、はずだった。
「____なんか、さむいよ。」
些細なたった一つのいざこざで、私たちの夢は割れた。
本気になっていたのは、私だけだったんだ。
甘いクリームの味に溺れそうになる。
そっと口を閉ざす私を見て、突然泉が立ち上がった。
「気分悪いなほんと。」
『い、泉？』
「自分の実力不足棚に上げて、
『な、泣いてなんか！』
『泣いてなんかない』と、反論しようとした矢先。
私の頭に、優しい泉の温もりを感じた。
隣にいてほしい。《瀬名泉》�□�←甘やかしてほしい。《天祥院英智》��
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 97人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
生しょうが(プロフ) - 錦さん» キャラとかいっぱい設定つけちゃうので、感情移入できるって言われるとすごい安心します……。べた褒め嬉しすぎるし、これからも頑張って小説書いていきますので、ずっと好きでいてください！！ (10月12日 21時) (
レス) id: 9fefad8449 (このIDを非表示/違反報告)
錦(プロフ) - リスタートの方から飛んで来ました。生しょうがさんの作品は語彙力が高いし話の構成やキャラの気持ちの表現が上手くて、読んでて感情移入が止まらない…！とても好きです…！！！ (10月10日 6時) (レス) @page23 id: 7f2cf0d803 (このIDを非表示/違反報告)
生しょうが(プロフ) - 立花さん» 自分こそあなたのコメントで癒されました好きです！！これからも頑張ります！ (2022年11月2日 0時) (レス) id: 1856a8e0e6 (このIDを非表示/違反報告)
立花 - 日々の疲れが癒されましたさすが生しょうがさんですね好きです（ノンブレス）ありがとうございます疲れどころか私の体も吹っ飛びました！最高です好きですやったあ！！！いつまでも追い続けます！！ありがとうございます〜！ (2022年11月1日 23時) (レス) @page11 id: f747a95a03 (このIDを非表示/違反報告)
生しょうが(プロフ) - 立花さん» そちらも見てくださったんですか!?ありがとうございます！リクエストも了解しました！初リクエスト頑張ります〜！ (2022年10月29日 17時) (レス) id: 1856a8e0e6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：生しょうが | 作成日時：2022年10月9日 1時
