お出かけしよう�� ページ25
『清海A』
『んっ、んぅ……？』
耳元で鳴る甲高い音で、私の頭が冴え始める。
今日は休日だし、目覚ましのアラームじゃない。これは、電話のコール音か。
寝ぼけ
『もしもし……』
《おはよう！ 清々しい朝だね！ 急だけど、今すぐに駅前まで来てほしいね！ 待ってるからね！》
プープープープー……
無機質な静けさに、通話が切られたのだと理解する。
通話時間、たったの五秒。しばしの沈黙。
『私は……悪くない。寝ぼけて忘れちゃっただけ、悪くない……』
スマホの電源を落とし、また目を閉じる。
その瞬間、下からピンポーンとインターホンの音がした。
……居留守するか。
そう渋ったりもしたが、さすがに連打されたら対応するしかないだろう。
ばんっ、と怒りのかぎりに力をこめて扉を開ける。
視線の先には、「どーも」と薄い笑みを浮かべた漣先輩がいた。
『急に何ですか、ていうか何であの人は私の連絡先知ってるんですか。』
「おひいさんの前で隙なんて見せないほうが良いっすよぉ？ 悪気なく勝手に交換するんで。」
『家は……』
「おひいさん家の情報網で。」
面倒くさそうに私の問いに答える漣先輩。
この人もパシられた被害者っぽいけれど、その態度に寝起きの私は結構苛ついてしまう。
「無視したら無視したで、あの人だりぃですよ？」
『……とりあえず上がってどうぞ。』
真っ当なことを言われてしまったので、不本意ながらも漣先輩を家に上げた。
「おじゃましまーす」と悪戯に笑う先輩。
幸いにも、今日は私以外誰も家にいない。
リビングに通して、コーヒーを差し出した。
『んじゃ、私は着替えてくるんで。飲んで待っててください。』
「……うぃーす」
上の空、といった様子。
ゆっくり辺りを見回しつつ、私の声も右から左に流しているようだ。
私は、深くため息をついて部屋に戻ろうと踵を返す。
その瞬間、「げほっ……！」と大きく咳き込む声がした。
『漣先輩？』
「げほっ、ごほっ……」
『もしかして、コーヒー苦手ですか？』
「へぁ……!? いや、んなことないっすよ、」
そんな彼の顔は、誰から見ても引きつっているように見えるだろう。
そして私の顔は、今世紀最大級に楽しそうに映るだろうな。
『……へえ？』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 324人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
生しょうが(プロフ) - にゃーちゃんさん» うわぁぁ！更新できず申し訳ないです！！面白いだなんて照れますね…！これからも読んでくれると嬉しいです！！ (2022年12月17日 12時) (
レス) @page26 id: 9fefad8449 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します！とても面白くて、引き込まれる様に一話から最後まで全部読んでしまいました…!!続きがとても気になります！更新頑張って下さい、楽しみにしてます！ (2022年12月14日 15時) (レス) @page25 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
生しょうが(プロフ) - 空桜さん» こ、こんな長編を一気読み…!?（大歓喜）ハマっていただけて嬉しいです！あとちょっとで投稿ペースも戻ると思うので、これからも見守っていてください…！笑 (2022年11月23日 20時) (レス) id: 1856a8e0e6 (このIDを非表示/違反報告)
空桜(プロフ) - 初めまして、更新お疲れ様です。昨日から一気読みするくらいハマってしまいました笑 イベントやスカウトを交えつつオリジナルのお話を読める作品は中々なかったので新鮮です。お知らせも読みました。ご自身のペースで無理はなさらずに頑張って下さい (2022年11月19日 21時) (レス) id: bedbd72616 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：生しょうが x他1人 | 作成日時：2022年10月29日 16時
