クリスマスの予定 ページ8
遠のくBGM。
地上への階段を上がる重なる足音。
ゆっくりと温度を下げていく空気に、ストールに埋もれるように首をすくめる。
「さむっ!」
最初に地上に出た拓海が白い息を吐きだした。
すっかりクリスマス一色になった街は、夜になるとその色を一段と濃くする。
ゲームセンターの前には、バルーンでできたサンタクロース。
どの店の装飾も赤や緑で縁取られ、街灯には、『Merry Christmas』と書かれたフラッグが飾られていた。
「クリスマス。どうする?集まる?」
寒さに耐えるように、足踏みしながら拓海が言った。
去年のクリスマスは、三人で、Pinocchioでお腹が破裂するほど食べて、それから、朝までカラオケしてたっけ。三人とも声がガッサガサになったなぁ。
「ちょっと、拓海!今年は……。ねぇ。」
一年前のクリスマスを回顧している私に、佐知が噂好きのオバサンみたいな目を向けているのに気が付く。
「あっ!そうね、今年は……。」
佐知のオバサンコントに乗っかる拓海が、わざとらしく気が付いたふりをして、私と高嗣を交互に見てから、佐知と目を合わせて「ねぇ」と頷いた。
こういう、私をいじる時の二人の息の合ったところ、嫌いじゃないけど、今回ばかりは、どう反応したらいいのかわからない。
私と高嗣の間で、まだ、クリスマスの予定なんて、話題にもなっていなかったんだから。
クリスマス……、どうするのかな。
なんて、こんな、みんながいる前で聞けるわけもなくて、黙ってしまった私に、佐知と拓海のにやけた視線が刺さった。
「クリスマス。仕事だわ。な、千賀。」
「あ……。うん。」
「オレら無理だから、三人で集まって。」
あまりにもあっさり言い切る高嗣に、千賀くんの方が気を使って申し訳なさそうに私を見た。
「あぁ、そうなんだぁ。仕事じゃな、うん、仕方ない。」
「うん。そうだね。よし、それじゃ、今年も、Pinocchio予約しておこうか!ね!」
慌てて取り繕うとする拓海と佐知の慰めるような言葉に、もはや、消えてしまいたくなる。
がっかり、というか、会えないという予定をこの場で知ったことがショックだった。
「そうだね。」
きっと、笑顔なんて作れてなかったし、それだけしか、言えなかった。
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植尾あい(プロフ) - あいこさん» 初めまして。何度も読み返していただいているなんて、とてもうれしいです。ありがとうございます。まだまだ先が長いお話ですが、のんびりマイペースで書き続けますので、宜しくお願い致します。 (2020年12月23日 11時) (レス) id: 2932ce7796 (このIDを非表示/違反報告)
あいこ(プロフ) - 初めまして。今まで何度も読み返してるほどファンです!これからも楽しみにしています。素敵なお話をありがとうございます(^^) (2020年12月16日 17時) (レス) id: 7af89e0405 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ソフィアさん» ありがとうございます。読みやすく、書きやすく、修正したら、必ず元に戻しますので、待っていてください!ソフィアさんのコメント、いつも励みになっています!これからもよろしくお願いします(^^) (2020年8月17日 21時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - 承知です。待ちまーす。 (2020年8月17日 18時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - いいっ、スッゴクいい。何てこと無い、ヤキモチやかれる場面だけど、彼女の嬉しい気持ちがすごく良くわかります! (2019年11月9日 7時) (レス) id: cfeb0a9590 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2019年10月22日 22時