ドーーーーーン! ページ40
「は……、は…」
離してください!
頭の中では、ちゃんと言えてるはずの言葉が、声にならない。
逃げ出したいのに、動けない足。
いつか佐知と話してた、
『痴漢なんて、鼻で笑って、アソコ蹴飛ばしてやるわ』
なんて、不可能な強がりだって、嫌ってほど思い知らされる。
握ったままのハンドルが不敵な笑みを浮かべたカレに引き寄せられる。
怖くて、怖くて、泣き出しそうになる自分が嫌になる。
助けて……
助けて……
アルコールの匂い。
助けて……
心の中で叫んでも、誰にも届かない。
「自転車、迷惑かけちゃったからさぁ。」
ねっとりとした視線で囚われて、恐怖に支配されていく。
深夜の空気が、まるで異次元への入口のようにまとわりつく。
「お詫び、させてよ。」
自転車越しに乗り出してくるカレは、ハンドルを握った手を自分の方へと引き寄せ、反対の手を私に向けて伸ばした……
嫌だっ!!!
「やめっ……。」
振り絞った声に、足音がかさなって。
伸ばされた手が、私の肩に触れる寸前。
「お詫びなんてっ」
背後から聞こえる、聞き覚えのある声。
「いらねぇよっ!!!」
それは、独特のハスキーボイス。
なんでここにいるの?
そんな疑問も頭をかすめたけど、そんな事より、膝から力が抜けるほどの安心感が上回った。
手を伸ばしていた彼の視線が、スライドするように、私の肩越しに後方へ向けられ、目を見開く。
「はいっ!ドーーーーーンッ!!!」
背後から囲われるように、長い腕が現れて、ビックリして固まる私の背中に当たる体温。
フワリと香る、匂い。
そして、大きな手は、カレを景気よく突き飛ばして、再び自転車ドミノをスタートさせた。
「あっ……。」
勢いで前のめりに倒れそうになると、しなやかな腕が、いとも簡単にお腹に回って、抱きとめる。
「オマエは!バカか!!!」
耳元で、息を切らして、切羽詰まった声が言う。
「……ニカぁ」
顔をあげれば、間近に、泣きボクロのある瞳が心配そうに、私を見ていた。
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植尾あい(プロフ) - ふじのんさん» ウフフ 友達2人についても気になっちゃうあたり、マニアックですよ!(笑)でも、その期待を裏切らずに、友達も含めて、この先の展開を楽しみにしていて下さい!二階堂くんの不器用な優しさとか愛情表現、キュンとしてもらえたら嬉しいです。 (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 不器用な2人の想いがもどかしくて、切なくて、書いてるはずの私もソワソワしちゃいますが、2人の幸せを願いながら、続きを書こうと思います!文章が素敵だなんて、褒めてもらえて嬉しいです!ありがとうございます! (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ふじのん(プロフ) - あいさん、こちらの小説では恐らく初めましてです!雑誌を広げて文字を書いたニカちゃん。この時点で「アレしかなおよな?」と予想はしていましたが、とどめの「またなっ○○」がズッキューンときました!2人はもちろんですが、友達2人もどうなるのか気になります(^^) (2018年1月6日 22時) (レス) id: fe899e2f87 (このIDを非表示/違反報告)
にかはるか(プロフ) - 植尾あいさん» ニカちゃんの声で心に響いています!自分の気持ちに気づいた主人公ちゃんと、不器用なニカちゃんがどうなるのか、とても楽しみです!文章もとっても素敵です! (2018年1月5日 23時) (レス) id: 3dfef49e61 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 二階堂くんの声で脳内再生されてますか?!よかったー。若い頃の二階堂くんをリアルタイムで知らないので、完全な妄想で仕上がっているので少々心配だったのですが、よかったー!のんびり更新ですが楽しみにお待ちくださいね! (2018年1月5日 18時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2017年7月18日 0時