罰ゲーム ページ39
戦利品の入ったショップのバッグに、雑誌の入った袋を捩じ込んで、半ばやけくそになって肩にかついだ。
足元に倒れた誰のものかもわからない自転車に手をかけると、思い切り引き抜いて立て直す。
真夏の夜中。
昼間より多少下がった気温とはいえ、汗をかくには充分だった。
ドミノのスタート地点でも、同じように人影が自転車を立て直し始めていた。
じわりと額に滲む汗。
溶けて人が変わるほどでは無いが、メイクが流れていくのが少し気になった。
これは、何かの罰ゲームかな?
徐々に倒れた自転車の数が減って、ドミノをスタートさせた張本人の姿が薄暗い街灯でも確認できる距離になった頃、巻き込まれた自分の自転車が見えてきた。
「なんか、本当に、すみません!」
少しボリュームを上げた声が背中に届いて、振り返ると、若そうなサラリーマンが汗だくで自転車を持ちあげていた。
「あーーー……、いや、そこの黄色い自転車、私のなんで、ついでです。」
『迷惑です』って言葉が喉まででかかったけど、何とか飲み込んで引きつった笑いを返した。
「えっ?!あ、コレですか?!」
「それです。」
慌てたサラリーマンがガシャガシャと雑に何台かの自転車を立て直して、私の自転車を救出してくれた。
「本当に、すみませんでした。後は、僕がやるので!」
爽やかにそう言って、私の自転車のサドルに付いた砂を手のひらで払ってくれた。
街灯から少し離れた場所のせいか、彼の表情はわからず、促される様に、自分の自転車に近づくと、爽やかだと思った彼からアルコールの匂いがした。
本能的に感じる嫌な空気。
「……ありがとうございます。」
早口てお礼を言ってから、目を合わせない様にして、自転車のカゴに荷物を詰め込む。
漂うアルコールと、汗をかいた男の人の匂い。
「ねぇ。」
自転車越しに身を乗り出す彼から、独特の息。思わず身を引いて、キュッと唇をつぐんだ。
「……失礼します。」
彼の言葉を無視してハンドルを握ると、反対側のハンドルを離してくれない。
人通りのない線路沿い。
電車が線路を鳴らして通り過ぎていくけど、助けを求められるわけもなく、泣きそうになる。
アルコールの匂いを纏った彼が、ニヤリと笑った。
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植尾あい(プロフ) - ふじのんさん» ウフフ 友達2人についても気になっちゃうあたり、マニアックですよ!(笑)でも、その期待を裏切らずに、友達も含めて、この先の展開を楽しみにしていて下さい!二階堂くんの不器用な優しさとか愛情表現、キュンとしてもらえたら嬉しいです。 (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 不器用な2人の想いがもどかしくて、切なくて、書いてるはずの私もソワソワしちゃいますが、2人の幸せを願いながら、続きを書こうと思います!文章が素敵だなんて、褒めてもらえて嬉しいです!ありがとうございます! (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ふじのん(プロフ) - あいさん、こちらの小説では恐らく初めましてです!雑誌を広げて文字を書いたニカちゃん。この時点で「アレしかなおよな?」と予想はしていましたが、とどめの「またなっ○○」がズッキューンときました!2人はもちろんですが、友達2人もどうなるのか気になります(^^) (2018年1月6日 22時) (レス) id: fe899e2f87 (このIDを非表示/違反報告)
にかはるか(プロフ) - 植尾あいさん» ニカちゃんの声で心に響いています!自分の気持ちに気づいた主人公ちゃんと、不器用なニカちゃんがどうなるのか、とても楽しみです!文章もとっても素敵です! (2018年1月5日 23時) (レス) id: 3dfef49e61 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 二階堂くんの声で脳内再生されてますか?!よかったー。若い頃の二階堂くんをリアルタイムで知らないので、完全な妄想で仕上がっているので少々心配だったのですが、よかったー!のんびり更新ですが楽しみにお待ちくださいね! (2018年1月5日 18時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2017年7月18日 0時