突然の質問 ページ26
「ねぇ、A。」
動き出す電車の中。
仕事を終えたサラリーマンに紛れて吊革に掴まって、並んだ佐知が窓ガラス越しに私を呼んだ。
空が青へのグラデーションを彩る電車の窓に、うつむき加減の佐知が映る。
「何?」
揺れる電車のリズムに、共に揺られる。
大きく揺れた瞬間、その揺れに流されないようにと、グッと力を入れて踏ん張る。
「……ニカのこと、どう思う?」
「えっ?……キャッ」
佐知の意外な言葉に、踏ん張っていた足から力が抜けて、そんなに高くないヒールのサンダルがぐらつく。
力を込めて握った吊革が倒れそうになる私を助け、体制を整えると、隣に立つ佐知と目が合った。
「動揺しすぎ。」
ガラス越しではなく、真っ直ぐに合う瞳は、私を可笑しそうに笑って細められた。
「してない!急に、佐知が変なこと言うから……。」
私の反論に、佐知は、いたずらを成功させたみたいに舌を出した。
どう思う?
それは、どういう意味?
「どうって……どうも何も、どう思うとかそういう所まで知り合ってないし……そもそも、初対面であんな生意気なさぁ……」
何て答えるのが正解なのかわからなくて、佐知が何を求めているのかもわからない。
口から出るのは、自分にも意味がわからない理由。
佐知になのか、自分になのか、整理しきれない気持ちを述べていると、隣に立つ親友が呆れ顔でため息をついた。
「Aってさ……頭かたいよね。」
私の意味不明な理由についてなのか、それとも、私自身についてなのか、佐知に指摘された言葉にどう答えていいかわからず、佐知を見ると、窓の外の遠い空を見つめていた。
「もうちょっと、正直に、素直に生きられたらいいのにね……。」
ポツリと零れた言葉は、たぶん、佐知の本心。
「……うん。」
同じように窓の外を見つめれば、ゆっくりと見慣れた街に近づいていた。
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植尾あい(プロフ) - ふじのんさん» ウフフ 友達2人についても気になっちゃうあたり、マニアックですよ!(笑)でも、その期待を裏切らずに、友達も含めて、この先の展開を楽しみにしていて下さい!二階堂くんの不器用な優しさとか愛情表現、キュンとしてもらえたら嬉しいです。 (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 不器用な2人の想いがもどかしくて、切なくて、書いてるはずの私もソワソワしちゃいますが、2人の幸せを願いながら、続きを書こうと思います!文章が素敵だなんて、褒めてもらえて嬉しいです!ありがとうございます! (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ふじのん(プロフ) - あいさん、こちらの小説では恐らく初めましてです!雑誌を広げて文字を書いたニカちゃん。この時点で「アレしかなおよな?」と予想はしていましたが、とどめの「またなっ○○」がズッキューンときました!2人はもちろんですが、友達2人もどうなるのか気になります(^^) (2018年1月6日 22時) (レス) id: fe899e2f87 (このIDを非表示/違反報告)
にかはるか(プロフ) - 植尾あいさん» ニカちゃんの声で心に響いています!自分の気持ちに気づいた主人公ちゃんと、不器用なニカちゃんがどうなるのか、とても楽しみです!文章もとっても素敵です! (2018年1月5日 23時) (レス) id: 3dfef49e61 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 二階堂くんの声で脳内再生されてますか?!よかったー。若い頃の二階堂くんをリアルタイムで知らないので、完全な妄想で仕上がっているので少々心配だったのですが、よかったー!のんびり更新ですが楽しみにお待ちくださいね! (2018年1月5日 18時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2017年7月18日 0時