すべてはキミに恋するため

起きてそうなヤツ ページ18

「やっべぇな。どうする？」


夜空を見上げれば、星も見えない都会の空を雲が覆い、街の灯りを反射していた。


「この時間じゃなぁ…んんんー…。」


帰れない距離じゃない実家。
でも、この時間じゃ、さすがに連絡するのも気が引ける。


そもそも、もう、寝てるだろうし……


ポケットからスマホを取り出して、凍える指先をすべらせる。


「さみーーーっ！」


起きてそうなヤツ……

起きてそうなヤツで、迎えに来てくれそうなヤツ……


そんな都合のいいヤツ、一人しか浮かばないから、探し出す名前は見慣れた二文字。


「ﾌｯ……みーつけた。」


思わず小声でそう言って、迷わず『通話』をタップする。

数回のコールで繋がる先。


「もしもし？起きてた？今どこ？」

「なぁんだよ、起きてたよ。」


相手が話し出す前に畳み掛ければ、鼻にかかった面倒くさそうな声は、半笑いで答える。


「あのさ、今からミツんち、行っていい？」

「あ？何時だと思ってんだよ？」

「鍵なくしちゃったの！」

「あ、わかったー……。寂しくなっちゃったんだろ？ﾝﾌ」

「はぁ？！ちがくてっ！マジで鍵無くて、家に入れないの！」

「……バカじゃねーの？ﾝﾊﾊﾊﾊ」

「もーーー、バカでもなんでもいいから、お願いっ！ちなみに、迎えにきてね。じゃっ！」

「あぁっ？！ちょっ……」



プツッ



これでよし！



最後は、早口で押しつけるように言って、一方的に切った。



もしも、ミツが飲んでて運転できない状態なら折り返し電話してくるだろうし、


迎えに来る気がなくても折り返し電話してくる。


寒空の下、凍え死にそうなオレを見捨てたりできないなら、


きっと……



「はい、きたー。」



スマホ画面が明るくなって、ミツからのメッセージが表示された。


ー 新しい住所教えろ


命令文なのは、迎えに来てもらう身分だから文句は言わない。

まだ、覚えたばかりの新しい住所を入力して、お願いポーズのスタンプと一緒に送信。


ーちょっと、時間かかるかも

ー出来るだけ急いで！寒くて死ぬ！


きっと今頃、車のキーをポケットに突っ込みながら、『なんだよ、自分勝手だな！』とか言ってるだろうな。


そんな、ミツの姿を想像しながら、ジャケットの袖を引っ張って、冷えた指先を隠す。

ドアに寄りかかるように座り込んで、寒さから身を守るように、出来るだけ体を縮こめた。

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