甘い香り ページ17
予期せぬ隣人との再会に、ちょっとだけテンション上がって、でも、もう、間違えないって、心のブレーキを引く。
お隣さんは、お隣さん。
ファンは、ファン。
オレは、…………『ニカ』
ゆっくりと冷たい空気を吸い込んで、瞬きする。
心の奥の『ニカ』のスイッチが音を立てる。
速度をあげた足音が、近づくのを感じて、どうするのがベストなのか考える。
深夜だし、スルーしちゃう?
それとも、挨拶くらいする?
視界の端から近づくキミが鮮明になっていく。
出さなきゃならない答えは、見つからない。
まるで、キミを待ってるみたいに佇んで、逸らした視線の隅のキミが脳裏に焼き付く。
ブーケを飾るリボンに隠れた細い指先
白いコートの裾からは、深い上質な緑色が揺れる
近づくヒールの音に、鼓動が共鳴して、胸の奥、見ない振りをした感情がザワついた。
やめとけ……。
そっと心の奥底へ押し込んで、繰り返さない様にと蓋をする。
まだ、過去と言うには、早すぎる恋の終わりの傷跡。
キミがオレの横を通り過ぎる瞬間、甘い香りが夜を染めた。
咄嗟の判断が上手くいくこともあるから、無理して答えを探すのはやめて、この甘い夜の空気に流されよう。
「どうも…。」
キミに届いたか心配になるほど小さな声。
「あ…どうも。こんばんは。」
深夜の空気に澄んだ音。
キミの声が心地よく返してくれた言葉。
薄桃色の頬。
大人色の唇。
急に恥ずかしさに襲われて、見つからない鍵を探す振りと、開くはずのないドアを開ける振りをして誤魔化した。
視界の端で、ドアを開けて、部屋の中に消えていくキミを見送る。
気づかれたかな?
また、一人になったドアの前で、一応の心配と少しの期待をしてみてから、冷え込む空気に身震いした。
「さみーーー。」
今は、気づかれたかを心配するより、部屋には入れない心配をした方がいい。
この部屋に入れなきゃ、オレは、『ニカ』でいなきゃならないから。
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植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時