梅雨《after story of キミ声》2 ページ26
濡れたスカートが膝に張り付くのを剥がしながら立ち上がろうとすると、大きな手に引き止められた。
「どこ行くの?」
「買い物してきた物を冷蔵庫に入れるの。」
「何買ってきたの?」
「お肉とか野菜とか……、あ、生ハムも買ってきたよ。」
「……ふぅん。」
途切れた会話。
でも、手首を掴む手は、いつまでも離されないから、立ち上がれずにいると、への字口のニカが寝返りをうつように私の方へ体を向けた。
「腐る?」
相変わらずしかめっ面だけど、上目遣いに一瞬ドキッとする。
どれだけ一緒にいても、ニカの何気ない仕草に胸が鳴る。
「うん。ほっといたら腐る。」
「じゃ、冷蔵庫入れてきていいよ。」
いつから、私の行動は許可制になったんだろうか?
ニカの不機嫌の理由がわからないまま、キッチンに向かう。
「ねぇ、電気くらいつけたら?」
オレンジ色の間接照明の光だけが照らすリビング。
そう言って、リビングの照明のスイッチに手を伸ばすとクッションに埋もれたままのニカが片手を上げて制止した。
「つけないで……、頭痛いの。」
あ、そういうことか。
カーテンの隙間から見える雨。
私のスカートを濡らした雨。
ニカの不機嫌の原因。
照明のスイッチから手を離して、なんだか子供みたいなニカのワガママが可愛くなる。
「フフッ……早く言いなよ。薬飲む?」
食材を冷蔵庫に入れながら、声をかけると弱々しく「……うん」って、返事が返ってきた。
「ちょっと待っててね。」
食材を詰め込んだ冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出して、扉を閉める。
濡れたスカートを着替えに寝室に入ると、ほんの数歩の距離なのに、ニカが不安そうな視線を向ける。
「どこ行くの?」
「雨でスカート濡れちゃったから、着替えてくるの。あと、薬持ってくる。」
「……雨、ヤダね。」
「そうね。」
濡れるのは、イヤ。
でも、こんな可愛いキミがみられるなら、たまにはいいかな。
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植尾あい(プロフ) - nanacoさん» んふんふ(//∇//)楽しんでいただけたようでよかったです!こういう雰囲気は、藤ヶ谷くんが似合いますよねぇ。また、イチャイチャするだけのお話を書きたいなーと、思いました! (2020年7月31日 17時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - 甘々藤ヶ谷さん!(//∇//) ごちそうさまでした、最高すぎます…(TT) ありがとうございます(TT) (2020年7月30日 23時) (レス) id: a7b3edb10a (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» ナナさん!!!お久しぶりです!お元気でしょうか? そうなんです!星に願いをに続いて、運命なんです!伝わってよかった(^^) 切ないけど幸せな気持ちになってもらえたら嬉しいです。 (2020年5月30日 13時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - あいさんお久しぶりです!!これは運命…と気づいた瞬間に涙が…。心がポッと暖かくなりました!! (2020年5月30日 1時) (レス) id: 3bad9f733c (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ソフィアさん» 年下俺様生意気な渉に迫られて、メロメロですよね。年上イメージがある横尾くんですが、こんな関係も時にはありかな?と。楽しんでいただけて良かったです! (2020年5月8日 22時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2018年9月12日 22時