梅雨《after story of キミ声》1 ページ25
閉じた折りたたみ傘は、どうしてこんなに扱いが面倒なんだろう。
ポタポタと滴る雨粒が足跡みたいに、エントランスから続くのを振り返りながらエレベーターに乗り込んだ。
ゆっくり上昇するのを感じながら、ぶら下げたスーパーの袋の中身が濡れていないか確認しようと覗き込むと、うっかり折りたたみ傘をスカートに思い切り擦り付けてしまった。
「あ……、あぁ……サイアク。」
もう少しで部屋に着くところでの失敗に、ガクリと肩を落とした。
もう、何日も青空を見ていない梅雨空に滅入っていた気分が、益々滅入ってしまう。
エレベーターを降りて、濡れた手で部屋の鍵を探しながらニカの部屋の前を通り過ぎる。
帰ってるかな……。
少しだけ気になって、でも、立ち止まらずに、自分の部屋の鍵を開けた。
― ガチャリ
湿気のせいか、少し回しづらい鍵を抜いて、ゆっくりとドアを開けると、リビングのドアの向こうに柔らかなオレンジの光が見えた。
「……ただいま。」
玄関には、脱ぎ捨てられた濡れたスニーカー。
「ニカ？帰ってるの？」
折りたたみ傘を立てかけて、濡れたパンプスを脱ぐと窮屈な一日から解放される。
返事のないリビングのドアを開けると、お気に入りのクッションに大きな犬が丸くなっていた。
「ねぇ、返事くらいしてよ……。」
キッチンにスーパーの袋を置いて、濡れた上着を脱ぎながら声をかけても、まだ、返事をしない。
……寝てる？
そっと近づいて、膝をついてその顔を覗き込むと、眉間に皺を寄せてうっすらと目を開けた。
「……おかえり。」
極めて不機嫌そうな声。
無造作にセットされた明る過ぎる短髪が、その表情と相まってヤンキー感を醸し出す。
「ただいま。」
やっと交わされた言葉。
不機嫌でも、私の部屋に帰ってきてくれた事が嬉しいなんて、どうかしてるかな？
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植尾あい(プロフ) - nanacoさん» んふんふ(//∇//)楽しんでいただけたようでよかったです！こういう雰囲気は、藤ヶ谷くんが似合いますよねぇ。また、イチャイチャするだけのお話を書きたいなーと、思いました！ (2020年7月31日 17時) (
レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - 甘々藤ヶ谷さん！(//∇//) ごちそうさまでした、最高すぎます…(TT) ありがとうございます(TT) (2020年7月30日 23時) (レス) id: a7b3edb10a (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» ナナさん！！！お久しぶりです！お元気でしょうか？ そうなんです！星に願いをに続いて、運命なんです！伝わってよかった(^^) 切ないけど幸せな気持ちになってもらえたら嬉しいです。 (2020年5月30日 13時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - あいさんお久しぶりです！！これは運命…と気づいた瞬間に涙が…。心がポッと暖かくなりました！！ (2020年5月30日 1時) (レス) id: 3bad9f733c (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ソフィアさん» 年下俺様生意気な渉に迫られて、メロメロですよね。年上イメージがある横尾くんですが、こんな関係も時にはありかな？と。楽しんでいただけて良かったです！ (2020年5月8日 22時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：植尾あい
| 作成日時：2018年9月12日 22時
