１：ｎの恋愛構図

意地悪なカレ《T》2 ページ45

私が生まれた時には、既に存在していた裕太とは、腐れ縁という名の鎖で繋がれ、幼なじみというカテゴリーに属する。

同じマンションで、隣同士の部屋、同世代の母親は、気が合う友達のようで、子供たちも同じように仲良く育つ……




はずだった……




幼稚園の時は、手を繋いで毎日登園したし、裕太が先に卒園することを知った私は、卒園式の日に、号泣したらしい。


小学生になった時は、裕太の黒いランドセルに憧れて、「黒いランドセルがいい！」って、親を困らせたし、高学年になっても一緒に下校して、当たり前のように、二人で私の家に帰っていた。


中学生になったら、急に、裕太の背が伸びて、私とあまり変わらなかった視線は、はるか頭上で、目が合う回数が減っていった。

少しずつ、少しずつ、お互いの違いに気がついて、裕太は、私の家に帰ってこなくなった。


それでも、卒業式の日、たくさんの女の子たちに囲まれる裕太が、その輪から抜け出して、私に言ったんだ。




「Aは、来年、オレと同じ高校に入れよ。」




その時の私が、嬉しいとか、悲しいとか、どんな感情だったのかは、もう、忘れちゃったけど、特別に行きたい高校もなかったし、学力的にも問題なかった私は、翌年の春、裕太と同じ高校の制服を着た。




それから……



そこから……




２年が経った今、卒業式の今日まで、私は、裕太専属のパシリだ。




生徒会長に、推薦されてるから、Aも生徒会に立候補しろ。

とか、

図書室で寝てるから、午後の授業終わったら、起こしに来い。

とか、

Aのお母さんの生姜焼き食べたいから、おまえの弁当とオレのパン、交換しろ。

とか……、


とか……、とか、数えだしたらキリがない程の命令の日々。


仲良く育つはずだった私たちは、いつからか、主従関係が出来て、


でも、




……それでも、一緒にいた。




.

意地悪なカレ《T》3→←意地悪なカレ《T》1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す