仔犬の悪知恵 ページ28
「はい。乾いたよ。」
ドライヤーの電源を切って、最後にニカの髪を撫でると、「ありがとっ」って、言いながら頭を振って、自然な分け目を探すニカから、フワリとシャンプーが香った。
いつもの私のシャンプーの香りが、ニカからする幸せ。
その香りに包まれてしまう前に、そっと立ち上がる。
「私もシャワー、行ってくるね。」
寝室に着替えを取りに入って、リビングに戻ると、クッションに小さくまとまったニカが私を見上げる。
「ん?どうしたの?お水なら冷蔵庫にあるから、勝手に飲んでいいよ。」
「うん。」
「行ってくるね?」
何か言いたげなニカを置いて、リビングを出ようとすると、慌てたニカの声が追いかけてくる。
「すぐに戻ってきてね!」
今日は、仔犬でいてくれるのね。
「シャワーだもん。すぐに戻るよ。フフッ」
そう言ってリビングを出て、ドアを閉める。
早足に短い距離を進んで洗面所に入ると鍵をかけた。
もう、これ以上は、限界。
ドアに寄りかかって俯くと、足元に静かに涙が落ちていった。
いっぱいになった、心の中をシャワーで流して、もう一度、ニカと一緒に笑おう。
だから今だけ、誰も見ていないここで、泣いてもいいよね。
・・・・・
程よく暖まった体を拭いて、部屋着に着がえる。
髪に巻き付けたタオルをほどくと、さっき、ニカから香ったシャンプーの香りが鼻をくすぐる。
鏡の向こうには、少し目の赤い私が、不安げな表情で立っていた。
毛先から滴る水滴を、タオルで押さえながら、ドライヤーの置いてある棚に手を伸ばす。
「あっ………」
ドライヤーは、ニカの髪を乾かしたまま、リビングに置いたままだった。
洗面所のドアを顔が覗く程度開けて、リビングのドアに向かって声をかける。
「ニカー−、ドライヤー持ってきて−。」
リビングから反応はなく、静かなまま。
そんなに広い部屋じゃない。
聞こえないわけがない。
もう一度、鏡で自分の顔を見て、それから、洗面所を出る。
「ニカ、ドライヤー………」
リビングのドアを少し開けて、様子をうかがうように声をかけながら覗き込めば、待ってましたと言わんばかりのニカが、ドライヤーを構えてこっちを見ていた。
「おかえりっ!
ほら、Aちゃんの順番っ!」
そう言って、ポンポンと手のひらで叩く場所は、やっぱりいつもの特等席だった。
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植尾あい(プロフ) - 千明さん» if聞きながら?!私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです!もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった!お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります! (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか?こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月23日 7時