ダイスキデス ページ12
「私だってそんなに詳しくないからね。」そう言ったわりに、なかなか詳しい真紀の解説を聞きながら、DVDを見始める。
会場いっぱいに煌めく小さな光。
その一つ一つに、それぞれの想いが詰まっていて、その全てが彼らに向けられる。
脳裏によぎる、文香ちゃんの涙。
私の存在が、この小さな光の数だけ、涙に変わるのかと衝撃を受ける。
選べるのは、私とニカだけ。
私たちの涙か、それとも、ニカを支える無数の涙か。
画面の向こうにいるニカは、汗に濡れた前髪で、長い腕と指先まで神経を巡らせるような、滑らかでダイナミックなダンスをみせる。
徐々に無言になっていく私に、真紀の口数も減っていく。
そして、ガラリと曲調が変わると、カラフルなタキシードに着替えた彼らが次々と現れる。
その中に見つける、ミントグリーンのタキシード。
「この曲………。」
すっかり黙り込んでいた私の声に、真紀がDVDのケースを手にとって曲名を確認する。
「ん………たぶん、『ダイスキデス』。」
片膝をついて、差し伸べる長く美しい腕の動き。
頬に触れる指先。
そして、繰り返される
『ダイスキデス』
その声の中から、私は、簡単にニカの声を探し出せる。
愛しい、愛しい、キミの声。
真紀の手が優しく私を撫でて、私のことを見ずに言った。
「Aの彼氏、かっこいいじゃん。」
「…………うん。」
小さく返事をすると、同時に涙が零れていった。
ニカの彼女でいるということは、二階堂高嗣の彼女でいるということは、こんな風に、気軽に友達に『彼氏』だと言えないってこと。
私の知らない世界に、不安を抱き続けなければならないってこと。
心の奥へ、自分の想いを追い込むように、思考を巡らせた。
次々と変わっていく曲と衣装を目まぐるしく追っていると、真紀のカバンでスマホが鳴った。
スマホを取り出した真紀が、その画面を見てから一瞬私へ視線を向けた。
「旦那さん?出てあげなよ。」
「ごめん。」
スマホをもって立ち上がった真紀が、廊下へと出ていく。
ドアの向こうで聞こえる会話。
暫くして戻ってきた真紀が、ひどく申し訳なさそうな顔で言った。
「ごめん。A。」
「ん?」
「私、帰るね。」
「………そっか。」
「………本当に、ごめん。」
時計は、8時を過ぎたところだった。
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植尾あい(プロフ) - 千明さん» if聞きながら?!私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです!もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった!お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります! (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか?こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月23日 7時