決心 ページ11
「バカ、A。」
そう言った真紀がラグの端で進めなくなった私を抱き締めた。
「ひとりで持ちきれなくなる前に、ニカに持たせないと……。ニカも同じ。」
「うん………。」
「……私も同じ。もう少し………もう少し早く、持ってあげればよかった。私……知ってたのに。」
その言葉に真紀にも同じように苦しい思いをさせてしまっていたことを感じる。
でも、それは、真紀の優しさで、その優しさがなければ、私は、この恋に踏み出せなかった。
「ううん。真紀には、感謝してる。いっぱい背中押してもらって、いっぱい付き合ってもらった。」
「フフッ……だって、Aとニカって焦れったいんだもん!」
大きな目に涙をいっぱい溜めて笑う親友の顔は、誰よりも可愛くて、誰よりも可笑しくて、沈んだ気持ちがほんの少し引き上げられる。
トントンッと少し強めに私の背中を叩いて、抱き締めた腕をほどいた真紀が両手を腰に当てて私に背を向けると、ラグに置かれた袋を見下ろす。
「しっかし、よくもまぁ……こんなに…。」
「だって………。」
「だってじゃないよ……もう、ニカにどんだけ貢ぐつもりよ。」
「なっ!ちょっと、貢ぐって!」
「冗談。で?どれからみる?」
軽く私をからかってから、ラグに座った真紀が袋の中からDVDを取り出してローテーブルに並べていく。
「え?」
「付き合うよ。お茶の間ライブ。ンフフッ」
それは、私を一人にしないための真紀の優しさ。
隣に擦り寄るように座ると、わざとらしくイヤな顔をして押し退ける真紀にはお構いなしに、並んだDVDの中から1つを取り上げる。
「これから見る。」
それは、ポップが付いていた白い箱。
「え?順番的に、こっちの若そうなヤツじゃなくていいの?」
「うん……聞きたい曲があるの。」
テレビ画面に映ったのは、確かにこのツバサのDVDだった。そして、ニカが口ずさんだ曲が、この中にあるのは確かだった。
すっかり夜へと景色を変えた窓にカーテンを引いて、テレビとデッキの電源を入れた。
きっと、この中のニカを見たら、私は、決心してしまう……。
すぐ隣にあったはずの想いが、
すぐ隣にあったはずの存在が、
手に入れてはいけないものだったと気付いて、
この手にあるリードを握る手を離す決心を………。
そして、私は、それを望むために、デッキにDVDを入れた。
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植尾あい(プロフ) - 千明さん» if聞きながら?!私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです!もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった!お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります! (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか?こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月23日 7時