ペットの役目 ページ10
「ニカは………。」
『違う』って、否定しようとしたのに、言葉が出ない。
頭の中には、真紀の言葉。
恋して、いいの?
好きになって、いいの?
背中を押してくれる真紀がいないから、答えを出せず、俯く。
ニカを見れない……。
「ごめん。間違った。」
突然、ニカがそう言うと、持っていた紙袋をローテーブルに置くと、この前と同じようにビーズクッションに埋もれるように座った。
「…… ペット的には、オスだよね。」
そう言って、埋もれたクッションから顔を出して私を見る。
間接照明の暖かな電球に照らされて、ニカの髪がオレンジ色に見える。
「ニカ……。」
ダメだ………。
甘えちゃダメだ……。
必死に自分を立て直す。
なのに、ニカは、どうしていつも………。
「Aちゃん。なんでそんな顔してるの?」
顔をあげると少し困ったように、眉を八の字にしたニカが見ていた。
「んんっ………。」
唇に出来る限りの力をいれて、首を振る。
「今、オレの出番じゃね?」
そう言って、埋もれたままの姿勢で、腕を伸ばすと立ち尽くす私の手首を掴んだ。
「な………なに?」
「癒しが必要?」
そう言って、私の手を引く。
私を見上げるニカと目が合う。
「………。」
ニカの髪に触れたら、癒される?
思い出してしまった『あの日』の想いを癒せる?
掴まれたままの手を、ゆっくりとニカの髪に近づけると、指先が髪に触れた瞬間に、ニカの手に力が入る。
「Aちゃん。
ペットは、ご主人様の変化に敏感なんだよ?」
そう言って、至近距離で目が合う。
我慢してた涙が、耐えられなくなる。
「今日は、こっちにしとく?」
私の手首を掴んでいる手と反対の手で、自分の胸をトントンと軽く叩いて、照れ笑いのニカ。
「……… そこ、癒されるの?」
言ってる本人が照れるから、私まで恥ずかしくなって、素直になれない。
でも、照れたままのニカが、私に向かい合うようにクッションに座り直して、
「間違いなくっ!」
なんて言うから、
「じゃあ……。そっちにする。」
私が最後まで言い終わらないうちに、ニカが掴んでいた手首を優しく引き寄せた。
まるでスローモーションみたいに、ゆっくりとニカの胸におさまると、ギリギリになっていた涙が溢れた。
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植尾あい(プロフ) - ちいさん» 生き甲斐だなんてっ!感激です。『欲張り』のあのシーンは、書き始めた時から、絶対に書く!と、決まってたシーンなので気に入って貰えて嬉しいです!仔犬感と大人感のバランス、うまくとりながら、日々、妄想に励みますっ(笑) (2015年3月2日 11時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 作者様の作品を読むのが最近わたしの生き甲斐レベルです( ; ; )もう仔犬なのか立派な男なのかわからない魅力的すぎる隣人ニカちゃんに毎日萌えています//私も欲張りのあのシーンたまらなく好きです!溢れ出す妄想、これからも楽しみに読ませていただきますね! (2015年3月2日 2時) (レス) id: 7ce2ec877c (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - aiMyuさん» 通勤のお供になれて光栄です!私的に朝が都合よくて、朝更新してますが…そうですか、不審者(笑)これは、大人な展開は、避けた方がよさそうですね。朝からねぇフフッ。帰宅後に読み返して貰えるなんて!ありがとう。これからもよろしくお願いします! (2015年2月26日 20時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
aiMyu(プロフ) - コメ返しwwあの、あいさんて朝更新してるじゃないですか?私、通勤中に読むんですよね。毎朝、電車内でフゥーって息吐きながら、ニヤニヤしちゃって…私、完全に不審者ですwwそして帰宅してから読み返す♪♪本当に尊敬してます☆ (2015年2月26日 15時) (レス) id: 81939e753e (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - キスマイさん» ハイハイ♪いらっしゃーい(笑)自分でももどかしくなりながら書いてます。でも、皆さんにキュンしてもらえて頑張れます!仕事バラしはねぇ……ウフフ…お楽しみに♪いつでもお喋りしに来て下さいね♪お待ちしてまーす。 (2015年2月26日 8時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年1月19日 8時