暗号 ページ37
「えっ？やったの？スーツで？」
立ち上がったニカが何も言わないから、私がニカに聞き返す。
スーツでスカイダイビング？
想像しきれないシチュエーション。
「で、真紀は、それを見たの？」
真紀への疑問も深まる。
「うん。見た。」
私を見ることなく、ニカに視線を向けたまま答える真紀に、それ以上突っ込むことは出来なかった。
立ち上がったニカは、慌てた様子でポケットからスマホを取り出すと私に向かって言った。
「Aちゃん。真紀ちゃんの連絡先、聞いてもいい？」
「…… なんで、私に聞くの？」
少しだけ、嫉妬した。
私の知らないニカを知ってる真紀に。
「Aちゃんの友達だから。Aちゃんが嫌なら聞かない。」
ニカの言葉に嘘はない。
私の気持ちを伺ってくれる優しさに、心の狭い自分が情けなくなる。
「別にいいよ。」
そう答えると、いつもの笑顔で「ありがとう」って言うニカが真紀に近づく。
そして、お互いのスマホを寄せて連絡先を交換しながら小声で話す。
「真紀ちゃん、意地悪。」
「どこがよ。」
「知ってたのに、オレのこと。」
「知ってるだけだからね。最初に言ったじゃん。」
「あぁ……。じゃあ、誰？」
「誰でもない。
でも、強いて言えば……センター。」
「玉かぁ…。」
「いい匂いするって本当？」
「本当だよ。ﾌﾌｯ」
二人の会話は、まるで暗号みたいで、私が入り込むタイミングは、どこにもなかった。
ちょっとした疎外感。
「これでよし。」
そう言ってスマホをバックにしまうと、真紀が私を見てから言った。
「Aの監視体制が整った。」
「……… 何それ。」
笑顔で言ったつもりだったけど、上手くいかなかった。
靴を履く真紀の後ろ姿に、聞きたいことはたくさんあったけど、ひねくれた私の心がすべての言葉を飲み込んだ。
「A。」
振り返った真紀が、リビングでビーズクッションに埋もれるニカを確認してから優しい口調で話し出した。
「気になるよね。さっきの話。ごめんね。」
「別に、平気。」
大人の私が強がるけど、そんなの真紀にはお見通し。
「きっとね。ニカが、自分で話してくれるから。それまで待ってて。」
「大丈夫だって。」
もう一度、笑顔を作る。
「Aの大丈夫は、大丈夫じゃない時。」
やっぱり、真紀には、かなわない。
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植尾あい(プロフ) - ちいさん» 生き甲斐だなんてっ！感激です。『欲張り』のあのシーンは、書き始めた時から、絶対に書く！と、決まってたシーンなので気に入って貰えて嬉しいです！仔犬感と大人感のバランス、うまくとりながら、日々、妄想に励みますっ(笑) (2015年3月2日 11時) (
レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 作者様の作品を読むのが最近わたしの生き甲斐レベルです（ ; ; ）もう仔犬なのか立派な男なのかわからない魅力的すぎる隣人ニカちゃんに毎日萌えています//私も欲張りのあのシーンたまらなく好きです！溢れ出す妄想、これからも楽しみに読ませていただきますね！ (2015年3月2日 2時) (レス) id: 7ce2ec877c (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - aiMyuさん» 通勤のお供になれて光栄です！私的に朝が都合よくて、朝更新してますが…そうですか、不審者(笑)これは、大人な展開は、避けた方がよさそうですね。朝からねぇﾌﾌｯ。帰宅後に読み返して貰えるなんて！ありがとう。これからもよろしくお願いします！ (2015年2月26日 20時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
aiMyu(プロフ) - コメ返しwwあの、あいさんて朝更新してるじゃないですか？私、通勤中に読むんですよね。毎朝、電車内でフゥーって息吐きながら、ニヤニヤしちゃって…私、完全に不審者ですwwそして帰宅してから読み返す♪♪本当に尊敬してます☆ (2015年2月26日 15時) (レス) id: 81939e753e (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - キスマイさん» ハイハイ♪いらっしゃーい(笑)自分でももどかしくなりながら書いてます。でも、皆さんにキュンしてもらえて頑張れます！仕事バラしはねぇ……ｳﾌﾌ…お楽しみに♪いつでもお喋りしに来て下さいね♪お待ちしてまーす。 (2015年2月26日 8時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：植尾あい
| 作成日時：2015年1月19日 8時
