第六話 飛行訓練 ページ9
午後からは飛行訓練の授業で、これもまたスリザリンと合同授業。他の授業の時もそうだったが、寮と寮の間の空気がギスギスしていて居心地が悪い。
そんな中、校庭にフーチ先生がやって来た。
「何をボヤボヤしてるんですか。みんな箒の側に立って。さぁ、早く」
先生の言葉に、スリザリンとグリフィンドールで綺麗に別れて一列になる。その光景に苦笑いしていると、僕の両隣にハリーとロンが並んだ。
「右手を箒の上に突き出して、そして、上がれ！と言う」
その掛け声と共に、一斉に皆は上がれ、と繰り返す。どうやら、向き不向きがあるらしい。目の前に居た生徒の顔面に、勢い良く箒が衝突した。
痛かっただろう、可哀想に。
「―――上がれ」
不憫に思うが、僕も言われた通りに言ってみる。すると、どうだろう。一発で箒が手に収まった。良い子だ。
隣を見ると、ハリーも一発でできたようで、お互いに顔を合わせて笑った。
「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、少し浮上して、前屈みになってすぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよ。一、二の―――」
三、と先生が口に出す前に、ネビルが飛び上がってしまった。
「こら、戻ってきなさい！」
先生の制止の声とは裏腹に、箒はだんだん高く上っていく。ああ、駄目だ。完全にネビルは冷静さを失っている。
「―――A！？」
見ているだけでは見捨てるのと同じ。そう思った僕は、箒に乗りネビルの所へ向かう。
その時、ネビルが箒から落下する。
急げ、急ぐんだ。
必死に手を伸ばして、真っ逆さまに落下しているネビルの服の首元を何とか掴む。
「っ、A！あ、ありが……！」
―――お、もい。
口に出さずにネビルへ謝罪する。ネビルのように、体格のいい人を長時間の間、僕は持ち続けられなかった。
大丈夫、出来るだけ衝撃がいかないようにする。恐怖を感じるだろうが、我慢して欲しい。落下して行く体躯が、やけにゆっくりに見えた。
ネビルを庇うように、地面に背中を打つ。
「―――っ、」
「「―――A！！」」
落ちた衝動で、身体が軋む。僕の名を呼ぶ二つの声に応えるべく、無理に頭を動かせば、一気に吐き気と目眩が襲い、視界がぼんやりと霞んだ。
視界の端が赤い。
震える手で、額に触れる。これは、僕の血か。
ああ、額の何処かが切れたのか。
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作者名：空天 馬
| 作成日時：2016年6月11日 1時
