第七話 シーカー ページ10
「そんなッ、A!しっかりしろ!」
ぼやける視界でドラコを見れば、凄い形相で僕を見ていた。いつもの自信に満ちた顔は何処に行ったんだ。
その後にネビルへ視線を向けるが、大した怪我はなさそうだった。
ああ、良かった。
「ごめん。ごめんね、A」
先生は僕の方脇に手を入れて抱き起こすと、ネビルにもう片腕を支えるように伝える。何を謝る必要があるのか。
何もかも、最初は上手くいかないことばかりだ。
ネビルは、それが今日だっただけ。
「よくもまあ無事で」
医務室につくなり、マダム・ポンフリーに説教され、頭を包帯で巻かれる。頭以外は打撲や擦り傷だけで、額の切れたところも大事には至らないそうだ。
しばらく安静にしていなさいとお叱りをうけると、ネビルと一緒に大広間に向かった。
「A、心配したんだよ!怪我は大丈夫なの?」
「うん、大丈夫」
騒めくグリフィンドール生に紛れ、そっとハリーの隣に座ると、勢い良くハリーが詰め寄って来た。驚いて背中を傾けたおかげで、背後に倒れそうになる。
体勢を戻しながら答えると、ハリーは安堵したのか笑顔を浮かべた。
「そうだ、聞いてよA!ハリーがシーカーになったんだ!」
「シーカーに?凄いな」
僕の知らない内に、ハリーがシーカーに選ばれたらしい。一年生がシーカーに選ばれるのは、珍しいことだった。
「A」
自分のことのように嬉しい気持ちに浸っていると、あの時聞こえたもう一つの声が耳に届く。
「……怪我は大丈夫か?」
「うん、大した怪我じゃないよ」
振り返るとそこには、知っている顔があった。組み分けが始まる前に、ハリーと一悶着を起こしていた―――ドラコだ。
ドラコの視線が、僕の頭に巻かれた包帯に移る。
大丈夫なのに。
それでも、わざわざ僕に声を掛けに来てくれたのかと思うと頬が緩む。
「そうか、何かあったら僕に言ってくれ。―――ところでポッター、最後の食事かい?地上ではやけに元気だね」
僕に向けられていた視線が、今度はハリーに移る。どういうわけか、ドラコはハリーを睨みつけながら敵対心を露わにする。
ハリーもハリーで、ドラコを鋭く睨み返す。
一体、どうしたんだ。
「僕が介添人をする」
「今日の真夜中。トロフィー室でいいね?」
しかも何時の間にか、ドラコと二人が決闘することになっている。何故こんな話になっているのか、話について行けず頭が混乱した。
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作者名:空天 馬 | 作成日時:2016年6月11日 1時