第三十話 後ろの正面 ページ33
真っ黒な視界の中、僕は一体何をしてたんだと考え込む。確かスネイプ先生と話して、その後トイレで――――。それに、何故かハリーの声がする。
……ハリー?
一気に意識が覚醒して、飛び起きる。
「A!よかった、目が覚めたんだね!」
「あぁ」
目を覚まし、正面を向くとクィレルが目の前に立っていた。
「……まさか、クィレル先生だったとは」
目の前に立つ、クィレルを鋭く睨みながら呟く。僕たちはずっと、賢者の石を狙っていたのはスネイプ先生だと思っていた。
だが、違った。
「確かに、セブルスはそんなタイプに見える。スネイプの傍にいれば、誰だって、か、かわいそうな、ど、どもりの、ク、クィレル先生を疑いやしないだろう?」
「でも、スネイプは僕を殺そうとした!」
そう言うと、クィレルが自分でやったと自白する。さらには、スネイプ先生は反対呪文でハリーを助けていたと。
クィレルが指をパチッと鳴らす。
すると、縄がどこからともかく現れて、僕とハリーは固く縛り上げられてしまった。
「―――チッ」
思わず舌打ちをする。
そんな僕を他所に、クィレルがみぞの鏡やトロールのことを話し出す。
「ポッター!ここへ来い。鏡を見て何が見えるか言え」
鏡の前へ歩かせるために、クィレルはハリーの縄を解く。ハリーがしばらく鏡を見つめていると、ハリーのポケットが膨らんだのが見えた。
「僕がダンブルドアと握手しているのが見える。僕のおかげでグリフィンドールが寮杯を獲得したんだ」
嘘だ。クィレルが気づくとは思わないが、ブツブツと何か言い出した辺りでハリーが僕の傍まで来て、縄を外してくれた。
「俺様が話す。直に話す」
クィレルがターバンを解き、そしてゆっくりと後ろを向く。驚いたことに、クィレルの頭にはもう一つ顔があった。
「この有様を見ろ。誰かの体を借りて初めて形になることができる。命の水さえあれば俺様は自身の体を創造することができるのだ。さあ、ポッター。ポケットにある石を頂こうか」
……こいつ、気づいていたのか!
ハリーが僕の手を掴み、後退りする。
「命を粗末にするな。私の傍につけ、アーカーシャ。お前は優秀な上に魔力が高い。俺様の元へ来い」
「誰が貴様の元に行くか」
繋がれたハリーの手を握り返し、僕は炎の燃え盛る扉に向かって駆けだした。
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作者名:空天 馬 | 作成日時:2016年6月11日 1時