第十話 友情 ページ13
「―――クルーシオ！！」
とっさに出た呪文だったが、トロールは苦しんで倒れた。父様の書斎で見た本に載っていた呪文で成功するかイチかバチかだったけど、三人を守れてよかった。
「何事です！」
すぐに、慌ただしい足音を立てながらマクゴナガル先生達が走ってきた。
杖を構えたままだった僕は、スネイプ先生に目をやると目が合って、僕はトロールに向けていた杖をゆっくり下ろした。
｢いったいこれはどういう事なんですか？｣
言い訳を言おうとしたその時、ハーマイオニーが前に出て口を開いた。
「私のせいなんです、先生」
「なんですって？Msグレンジャー」
眉根を寄せてマクゴナガル先生は、ハーマイオニーを怪訝に見る。待て。それは、違うだろう。僕達はともかく、彼女は巻き込まれた被害者だ。
納得がいかず、二人の間に入ろうとする。
「トロールを探しに来たんです。本で読んだから倒せると思って。でも、ダメでした。A達が来てくれなかったら、今頃死んでました」
「ま、ッ」
しかし、ハーマイオニーに無言で腕を掴まれ、動きを止める。どうして止めるんだ。傷付いてなお、僕達を庇いさらに傷を得るのか。
「とても愚かな行いでした。グリフィンドールから5点減点です。怪我が無いならグリフィンドール寮に帰った方がよいでしょう。生徒達が、さっき中断したパーティーの続きを寮でやっています」
マクゴナガル先生がそう言うと、ハーマイオニーは無言でトイレを出て行った。
｢貴方達も、無事だったのは運が良かったからです。１年生で野生のトロールを相手にして生きて戻れるのはそういないでしょう。よって５点ずつ三人に与えることにします。その幸運に対してです」
こんなことで点数を貰ったって、素直に喜べない。誰かを犠牲に得た得点なんて、寧ろ願い下げだ。他の寮にくれてやる。
「ハーマイオニー！アレは、」
「……いいの、A」
説教から解放された僕達は、彼女の元へ駆けた。少し俯いて笑うと、ハーマイオニーは吹っ切れたように振り向いて僕達を見る。
「ごめんなさい、私。あんな言い方しか出来なくて」
「……そんな！僕の方こそ、ごめん。君のこと悪く言ったりして」
途切れ途切れに謝りながら、ロンはハーマイオニーに手を差し出す。ロンなりの仲直りの仕方なのだろう。
数回目を瞬かせた後、ハーマイオニーはその手を取って握り返した。
「助けてくれて、ありがとう」
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作者名：空天 馬
| 作成日時：2016年6月11日 1時
