第八話 浮遊呪文 ページ11
「朝、か」
暖かい朝の日差しが部屋を照らし始めた頃、それが合図かのように目を覚ます。
「おはよう。ハリー、ロン」
「……おはようA」
まだ少し眠いけど、欠伸を溢しながら起きあがって着替え始める。一通り着終えると、ネクタイを締めながら三人で大広間へ向かった。
「昨日の決闘、どうだった？」
「そうだ、大変だったんだ！僕達、マルフォイに騙されたんだ。それでフィルチとピーブズが来て、逃げる為に何処かの部屋に入ったんだ」
昨日の決闘の件について聞くと、耳を疑う言葉が返ってきた。嘘ついたのかドラコ。内心呆れながら、一生懸命に何かを伝えようとするロンの話に耳を傾ける。
昨夜、二人は大冒険をしたらしい。
「そしたら、その部屋に頭が三つの怪物がいたんだ！」
二人を疑うわけではないが、少し疑問を抱く。普通、生徒が訪れるであろう校内で、怪物を飼育するか？
二人のように偶然遭遇して、怪我をさせた、では遅い。
「……ロン、ハリー。怪我はないのか？」
「ないよ、ありがとう！でも反応するところそこ！？」
何か僕は、可笑しいことを言ったか。確かに怪物も気になるけど、僕にとっては二人の安全の方が心配だし。
あの騒動から何事もなく数週間が過ぎ、ハロウィンの日がやって来る。
そんな中で、今日は妖精の魔法の授業がある。ついに、やってみたかった浮遊呪文の練習が始まるおかげで、いつもより気分が浮かれていた。
僕はハリーと組み、ロンはハーマイオニーと組む。
｢みなさん、いいですか?ビューン、ヒョイですよ。呪文を正確に｣
「ウィンガーディアム・レヴィオサー！」
隣の席で、率先してロンが杖を振り回しながら呪文を唱える。ロンの杖先にある羽は、微かに揺れるだけで浮き上がらない。
惜しいな。発音が、少しずれている。
｢そんなに振り回したら危ないでしょ？それに、発音も違ってる！｣
「そんなに言うなら自分でやってみろよ」
ロンのペアになったハーマイオニーが、間違いを偽りなく指摘すると、見る見るうちにロンは不機嫌になっていく。
「ウィンガーディアム・レヴィオーサ！」
教科書通りの正しい発音と、軽い杖の振り。次第に、ハーマイオニーの机にある羽は、地を離れて空中に浮いた。
「皆さん、見て下さい。グレンジャーさんがやりました！」
先生が歓声を上げてハーマイオニーを褒めると、さらにロンの機嫌は悪くなっていた。
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作者名：空天 馬
| 作成日時：2016年6月11日 1時
