二十三話 ページ23
屋敷の扉を開いても、灯りは一つもついていなかった。
まさかとは思うが、念のため、最大限の注意を払って屋敷の中に足を踏み入れる。
しゅ、と、マッチを擦る音が聞こえてから、ぼんやりと蝋燭が点く。
蝋燭の光に照らされて闇の中に浮かび上がったのは、七年前に確かに消えた彼女だった。
「…A……？」
七年の年月を経て、随分と大人びた彼女は、七年前と変わらない無表情を浮かべていた。
「…久し振りね……ディオ。」
Aは、火のついた蝋燭を机の上に置いた。
「な、んで…」
「とても、立派になったわ。」
「Aこそ……綺麗に、なったね。」
辿々しくも、思ったことを返すが、Aの表情はピクリとも動かない。
どうやら、鉄仮面は強化されたようだ。
「ジョナサンから話しは聞きました。色々まああったようですけれど、今一よく分からないんですけどね。」
「ジョジョから……と言うことは…」
Aは小さく頭を縦に振る。
「勿論、毒薬の件も聞きましたよ。」
「……つまり？」
アイスブルーの瞳を見つめれば、ゆらゆらと燃える紅い炎が写っている。
意思の強い瞳だ。
「いえ、責めるつもりできたんじゃあないんです。責められるなら貴方達から逃げた私。」
胸に手を当てて、芝居がかった所作で体を動かすが、まぁなんとも、表情は変わらない。
そこがなんともミスマッチだ。
「なら君は何をしに来たって言うんだ。」
「貴方と話をしに来たんです。ディオ。」
「話し…か…」
かつ、と、靴をならしながらAが近付いてくる。
確かに彼女からは敵意や嫌悪、ソレににたものは感じられない。
ゆっくりと手を伸ばし、その頬に触れようと試みた。
「ディオ！Aに触れるんじゃあない！」
「ジョジョ！？」
突如、暗闇からジョジョが飛び出てくる。
なるほど、ここにはジョジョを始め、たくさんの人間が居るらしい。
今にも殴りかからんとするジョジョを、Aは片手を突きだして制する。
「ジョナサン。このくらいは良いでしょう？貴方ともしました。」
「っ……」
しぶしぶジョジョが引き下がれば、Aは両手を大きく広げた。
「ディオ。」
優しく名前を呼ばれ、Aを抱き締める。
ぎゅう、と、少し強めに抱き締めれば、Aの髪からは柔らかく暖かい陽だまりのような香りがした。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 186人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
東雲出雲(プロフ) - 罠做さん» ありがとうございます！文章が素敵だなんて(*´ー｀*)続編できましたので、そちらもどうぞ宜しくお願い致しますm(__)m (2015年8月18日 11時) (
レス) id: 64e849f3b1 (このIDを非表示/違反報告)
東雲出雲(プロフ) - ランタンさん» ありがとうございます！続編ができたので、そちらもどうぞ宜しくお願い致しますm(__)m (2015年8月18日 11時) (レス) id: 64e849f3b1 (このIDを非表示/違反報告)
罠做(プロフ) - 続編楽しみにしてます！！文章が素敵で読み易かったです、続き気になりますねo(^▽^)o (2015年8月18日 2時) (レス) id: 1a112de355 (このIDを非表示/違反報告)
ランタン(プロフ) - この話とてもよかったです！続編も頑張ってください！ (2015年8月17日 20時) (レス) id: 751d6d43a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：東雲出雲 | 作成日時：2015年8月15日 11時
