第七話 ページ8
『息‥してる？』
母は、首を掴んでいた両手を暫く悶え苦しんだのちに床にパタリと倒れた。
父はまだ、苦しんではいる。
‥そんな父を、しぶといと思ってしまった私がいた。
今の私はきっと、敵だ。
良心までも毒されて普通の感覚が麻痺をしている。そんな存在になってしまった。
もう、一回‥首に触手を巻き付けたら‥。
何て考えもよぎってしまう。
これは、"復讐"なのに。今までのことの。
私は、何を悩んでいるのだろうか。
早く、早く‥他人に見つかる前に‥。
私は震える触手をもう一度宙に浮かせ、矛先を父に定めようとする。だが、触手が私の感情の不安定さで震えているのか、狙いが定まりにくい。
『くっ‥！定まれっ‥！』
まだ、私には、僅かに良心は残っているのかも知れない。だけど、そんなものは、今は捨て置け。私は人を一人、殺，してしまった。
私はもう、立派な敵だ。何を悩み恐れているのか。どうせ、私は捕まるんだ。捕まる。
だから、せめて、捕まる前に‥。こいつを‥！
『やらないと。やらないと。大丈夫。出来るはず‥。もう、後戻りは出来ないんだ、A!!』
右手を宙にあげて、ぐわっと押し付けるような仕草をした。
触手は、床で苦しむ父目掛けて、飛び出した。
触手は父の首に巻き付いて、絡まった。
床に粘液が滴り落ちる。
「ぐっぁああっ‥！」
『はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ』
父も母と同じように暫く悶え苦しんだのち、首を押さえていた両手を床にパタリと落として、倒れた。
『やった‥のか‥？』
今までの復讐と言わんばかりの幸福と、達成感に満ち溢れると同時に私はもう、立派な犯罪者なんだと感じると、罪悪感に襲われた。
心の何処かでは自分は正しい、間違っていない。だって今まで、さんざん苦しめて来たのは
こいつらなんだと、正当化する。
でも、人,殺しと自分を非難する声も聞こえる。
『もう、戻れないなぁ‥。勝己と出久に顔向け出来ない‥。』
そう自傷気味に笑っても虚しく部屋に響くだけだった。
『もう、いっそのこと、捕まるか‥。』
そう諦めかけようとしても、学校で嘲笑うあいつらの声が脳内の中で反響する。
「影薄い」「いたの？」「敵向きの個性」
「何も出来ない」「能無し」「ボッチ」
前よりかは幾分かはましな気持ちだが、まだ、心には重く、鉛のように私を引きずって離さなかった。
逃げよう。逃げて、私も自由になりたい。
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鶉野 - 応援、ありがとうございます。面白いと思ってくださったのなら嬉しい限りです。更新、頑張らせて頂きます。 (2020年5月25日 6時) (
レス) id: 1589f04ac1 (このIDを非表示/違反報告)
ヱる - 凄く面白いです。主さんのペースで無理せず更新頑張ってください。 (2020年5月25日 0時) (レス) id: 660f048392 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鶉野 | 作成日時：2020年5月18日 14時
