咲けぬ華のまま

36th. ページ38

週に一度の通院。

これが終わったら約束の海に行ける。



海だからとママに誘われ、ワンピースや帽子を買いに行った。
ママが楽しそうだから私も楽しかった。



｢こんにちわ。今日は随分と夏らしい格好だね？｣



｢変じゃない？可愛い？可愛い？｣




白いワンピースは初めて着たから正直似合っているかわからない。




｢今日は以前言っていた海かな？
とても可愛いよ。｣




その後いつも通りの診察。




｢最近は暑いからかあまり食欲がないです。

あと、疲れやすいのは...もとからか。
息が苦しくなる時がたまにある。｣




｢…そうか。
毎日暑いもんね。

じゃぁ梓君と、楽しんでおいで。｣




｢はい。ありがとうございました！
いってきます！｣






Aがいなくなった診察室で斎藤はカルテをただ眺めていた。




｢あんなに笑って、楽しそうにしているのにな。

神様も意地悪だ。


やっと掴んだ幸せすら...｣





悔しそうに拳を握り、Aが出ていった扉を見つめていた。





｢せめて、せめて最後の瞬間まで、
苦しまないように..

幸せな日々を過ごしてくれたら...｣





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