52.「違うよ、俺んだよ!」 ページ12
ふと、窓からの光で目が覚めた。
十四松の手紙を見た後、そのまま寝てしまったらしい。
ずっと握っていたのか、手元にはすっかり皺くちゃとなってしまった手紙があった。
「……、朝ごはん、作らないと。」
壁掛けの時計をみて、立ち上がる。
朝の8時、おそ松たちはまだ寝ている時間だが、それでも構わず朝食を作る。
仮にもお母さんたちはおそ松たちよりも早くに起きるわけだし、いつまでもおそ松たちをまっている訳にはいかない。
この世はおそ松たちを常に待ち続けているというのに。
私のために、世界は立ち止まってくれないし、これどころか目もくれてもらえないのだ。
「………、母さん。」
ふと、いつもなら聞こえてこないはずの声が居間から零れ落ちてくる。
誰だ、こんな朝早く(六つ子比)に。
「……どうしたの、トド松。Aだったらそろそろ起きてくる時間よ。」
ふと、お母さんがそんなことをいった。
何故、今私の名前が出たのだろうか。
そんな疑問が頭を埋めて、つい話を聞いてしまう。
障子に影を作らないよう、階段に座り込んで。
「……そっかあ。……あのさ。僕、Aになんて思われてるんだろ。性格の悪い兄かな、恐怖対象かな、それとも、チョロ松兄さんみたいにドライモンスターだって思われてるのかな、それともそれとも、」
「トド松、やめなさい。」
トド松はよほど私になんて思われているのかが不安なのか、お母さんにただひたすら自虐するかのように尋ね続けるだけだった。
それをお母さんは制止して、静かに言った。
「……あの子はね、十四松に似て人のことを絶対に悪く思ったりはしない、とても優しくていい子なのよ。過去が過去だからなんとも言えないけれど、嫌っているわけでは決してないはずよ。……だって、毎日ニート達の朝ご飯を作ってくれているのはAなのだから。」
「……でも、皆が話しかけたときのAの目はすごく怖いんだ。チョロ松兄さんに話しかけられた時とかなんか、Aはどこか遠くの場所を見つめて、「遠く」に慄いてる。……、僕、Aと仲直り、できるかな」
少しずつ詰まっていくトド松の声。
それは彼特有の嘘ではなくて、本心で言っていることであることがすぐにわかった。
「……するかしないかはトド松の勝手よ。ただ、それはあの子も同じってこと、忘れちゃダメよ。」
六つ子の中で、彼が一番私と近い。
だから尚更、声がかけづらかった。
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紫垣(プロフ) - 続きが待ち遠しい!!……もっと見つけるのが早かったらまだ更新続いてたのかな( ; ; ) (4月18日 5時) (レス) @page21 id: f62f374630 (このIDを非表示/違反報告)
燎_*(プロフ) - 更新停止……だと!?!?!?誰か、!!この作者を呼び戻してこい!!! (1月17日 3時) (レス) @page21 id: 4b8e8fd2cd (このIDを非表示/違反報告)
低浮上な塩なんだなあ(プロフ) - つ、続きは…続きは何処ですか…!?!?(血涙)更新をずっと楽しみに待っております…… (10月30日 2時) (レス) @page21 id: 6cf2860157 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - この作品が大好きです。更新待ってます! (6月4日 22時) (レス) @page21 id: 395eb4f5e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらっち(プロフ) - 何年でも更新を待ちます。 (2022年5月15日 0時) (レス) @page21 id: ab3ad11547 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2016年1月17日 17時