53.「もらってないよ、お金なんて」 ページ14
「……あらA、さっきの話きいてたの?」
がらり、と襖が開いて、お母さんが出てきた。
「……トド松は、私のことどう思っているの?」
「……え…?」
トド松は可憐で、世渡りが上手で、甘え上手。
何もかもが、私と全く違う。正反対だ。
そんなトド松に、私はなんて話しかけたら良い?
どんな話をすれば良い?
お菓子の話でもすれば良い?
何もかもが、分からない。
生まれ順の隙間がいちばん狭いからこそ、どうすれば良いのかわからない。
それに、何故か気恥ずかしくて、緊張する。
その緊張は他の兄弟と少し違って、憧れているけれどどう話しかけたら良いのか分からない同性に対して抱く緊張感と酷く似ていた。
「……どうって…、」
それは、どうやらトド松も同じようだった。
この前だって、話があるといって私に話しかけてくれたときも、どこか落ち着きのないような感じをうけた。
それに、本人にあまり聞かれたくない弱音を聞かれてしまったのだ。
戸惑わないはずが、緊張しないはずが、なかった。
「……トド松のことを何とも思ってなんかないよ。興味なんてないもの。おそ松たちにも、興味なんてない。おそ松にもカラ松にも、チョロ松にも……一松、にも、十四松にも。……トド松だって、同じでしょ」
ひしり、とトド松から表情が消えた気がした。
そのときに、違う、と必死で抵抗して、私に向かって懸命にトド松は叫んだ。
「っあのねぇ?!Aには分からないかもしれないけれど、僕は六つ子の末っ子なんだよ!?五人とも纏まりがなくて、我儘で、『五人の弟』としてついていくのもやっとなんだよ!それで、それで!Aの前で『兄』として、『六人の兄の内の一人』として振る舞えているか不安で!……ふあん、で!……」
「もうやめなさい、Aにトド松。兄弟喧嘩はもう見たくないのよ。」
どんどんと火がついてゆくトド松を、お母さんが牽制した。
そうして私の方をみて、静かに叱りつけた。
「A、辛い思いをしているのは決して貴方だけじゃないのよ。少しずつでいいから、歩み寄ってあげなさい。」
お母さんの言葉を聞いて不意に小さな暴君の姿が目に浮かんだが、すぐに消えていった。
「ざまあみやがれ。」と、嗤っているような気もした。
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紫垣(プロフ) - 続きが待ち遠しい!!……もっと見つけるのが早かったらまだ更新続いてたのかな( ; ; ) (4月18日 5時) (レス) @page21 id: f62f374630 (このIDを非表示/違反報告)
燎_*(プロフ) - 更新停止……だと!?!?!?誰か、!!この作者を呼び戻してこい!!! (1月17日 3時) (レス) @page21 id: 4b8e8fd2cd (このIDを非表示/違反報告)
低浮上な塩なんだなあ(プロフ) - つ、続きは…続きは何処ですか…!?!?(血涙)更新をずっと楽しみに待っております…… (10月30日 2時) (レス) @page21 id: 6cf2860157 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - この作品が大好きです。更新待ってます! (6月4日 22時) (レス) @page21 id: 395eb4f5e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらっち(プロフ) - 何年でも更新を待ちます。 (2022年5月15日 0時) (レス) @page21 id: ab3ad11547 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2016年1月17日 17時